衝動的な退職はいけません
会社を辞めたくなったら、退職したい気持ちを会社に伝える前に、気持ちを静めていろいろなことを考えてみましょう。
辞めたいと思った理由はなにか、それは辞めなければならないほど大きな理由なのか、もう少し辛抱すれば環境が変わるのではないか、仕事を変えてもらうことで解決できるのではないか、自分が悪くないのであれば対決することで改善できるのではないか、いろいろ考えてみましょう。
ものすごく嫌なことがあれば、良い点などはどうでもよい気持ちになりがちですが、どうしようもないと思うようなことでも、会社に相談したり、改善してくれるように投げかけることで解決することもあります。
解決不可能ということであれば辞めるのもしかたありませんが、そのときは先の見通しも考えましょう。辞めてどうするのか、採用してくれそうな会社はあるのか、求職活動のあいだ食っていく蓄えはあるのか、失業給付で足りるのか、親などの援助は期待できるのか、よく考えてみましょう。場合によってはお金をためることを目的にもう少し頑張るという選択肢もあります。
ただし、会社のせいで体調が悪い、毎日がつらいという状況にあるときは別です。我慢しているうちに健康を損なっては身も蓋もありません。
そういうときは、退職を申し出る前に、医師の診察を受けて健康状態を確認しましょう。退職前の診察は重要です。体調の悪さが会社に起因するという診断になれば、その治療には労災保険の適用を請求することができます。休まざるを得ないのであれば傷病手当金を1年6ヶ月に渡って受給できる可能性もあります。会社の対応が悪くて病気などの被害があったときは損害賠償請求ができる可能性も出てきます。その病気が悪化して障がいがある状態になれば、障害厚生年金を受給できる可能性も出てきます。
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いずれの場合でも、家族がいる場合には、家族、特に配偶者には事前に相談しましょう。辞めてしまってから結果だけ伝えるのは最悪です。家族への責任感や誠意を疑われます。
退職の気持ちが固まったら
いろいろな角度から考えて気持ちが固まったら、会社に話しをすることになりますが、通常は直属の上司に話しをします。
退職の意思を伝えるときには、書面による退職願を用意しておきましょう。一通り退職の意思を説明してから差し出します。後でも良いのですが、なるべく退職の意思表示と同じ日に提出しましょう。
民法上は2週間前に会社に伝えればよいことになっていますが、ほとんどの会社では引き継ぎの期間を確保するために、それ以上の期間を就業規則で設定しています。事情が許す限り、就業規則に定められた期間内に退職の意思を伝えるようにしましょう。
同業他社への転職や会社と同じ商売を立ち上げるときは注意が必要です。基本的には憲法でも認められた職業選択の自由がありますが、競業避止というルールにひっかかることがあります。
まずは、就業規則にそのような規定があるか確認し、規定があるときは、その規定への対応策を検討しましょう。
慰留されたら
決まり文句のように「なぜ辞めたいのか?」聞かれます。例えば、同僚が嫌いだとか、上司が嫌いだとかいろいろと理由はあるでしょう。
有期雇用の途中退職を除いて「言いたくありません」でも構わないのですが、ある程度は理由を説明するのが一般的です。
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強く慰留されることもあります。引き留めたいときは、断念させようといろいろ言います。褒めたり脅したり期待を持たせたりします。
そこで考えが変わる人もいますが、望まれて残ったとしても、一度退職を申し出たという事実は残ります。
ですから、退職すると言ってしまったら慰留を振り切ってそのまま辞めるのが普通です。残れば絶対に損をするという訳でもありませんが、退職を切り出すというのはそれだけ重いことなのです。
書類上の退職理由に注意
円満退社が良いのですが、円満にといっても、何でも会社の言うとおりにすることではありません。大事なことは主張しましょう。
ハローワークに提出する「離職票」に記載される退職理由によって失業給付の基本手当の支給開始時期や受給額に大きな差が出ます。
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例えば、家庭の事情によって転勤ができず、やむを得ず辞める、上司や同僚のパワハラに耐え切れずに辞めるなどの場合は、会社都合退職や、特定理由離職者になる可能性があります。自己都合で処理されると大きな損失になります。
このような理由で退職するときは、言いにくい場合もあると思いますが、退職申し入れのときに、しっかりと理由を述べて、離職票にその旨の記載をしてもらわなければなりません。また、退職願いに「一身上の都合により」などと、自分に責任があるような書き方をしてはいけません。
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転職するにしろ、開業するにしろ、衝突して会社を辞めるより円満に辞めた方が楽ですが、どのような辞め方を選択するかは、そのときの事情によります。
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