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7月, 2021の投稿を表示しています

相続税の申告と納付

相続税とは 相続税は、相続や遺贈によって財産を取得したときにかかる税金です。 相続すれば必ず課税されるわけではありません。取得した財産の額の合計額が基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ありません。 相続税の基礎控除 基礎控除額は、3千万円+(6百万円×法定相続人の数)です。 配偶者の控除 配偶者は優遇されています。被相続人の配偶者が相続する財産が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかかりません。 1.1億6千万円 2.配偶者の法定相続分相当額 例えば、子がいれば妻の相続分は財産の2分の1です。妻が法定相続分の範囲で相続した財産には、それがどれだけ多くても相続税がかからないということです。 法定相続分以上を相続した場合でも、1億6千万までは相続税がかかりません。 たとえば、相続人が、「配偶者と子」であれば、配偶者の法定相続分は2分の1です。したがって、課税対象となる相続財産が10億円であっても、配偶者であれば、このうち5億円を相続しても相続税は0円ということです。 また、被相続人が残した財産が1億6千万円以内であれば、すべての財産を配偶者が相続したとしても、相続税は0円です。 相続税の配偶者控除の適用を受けるには、上記の制度により納付する相続税額がゼロになる場合でも、必ず、相続税の申告をしなければなりません。 なお、配偶者控除を最大限利用すると、結果的に、その配偶者本人が亡くなったときに残る財産が多くなるので、次の相続のときに相続税が多くなる可能性が高まります。配偶者が相続するときには配偶者控除がありますが、子が相続するときにはそうした特例はないからです。 したがって、配偶者控除を使うくらいの大きな相続財産であれば税理士等の専門家に相談した方が無難です。 相続税の課税対象になる財産 代表的な相続財産は、土地や建物、預金です。 現金・預金 現金は額面、預金は残高が相続財産です。評価するまでもなくはっきりしています。 不動産 土地や建物は、財産としてどれくらいの価値があるかは、国税庁の通達に基づく方法で評価して価額を算出する必要があります。 (注意:この通達に基づいて価額を算出しても、税務当局が、時価との間に著しい乖離があるなど「特別な事情」があると認めた場合は、別の方法によることができるという通達もあります。) 土地の相続税評価額は、路線価がある場合

紛争調整委員会のあっせん

あっせんとは 従業員は、都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会にあっせんを申し出ることができます。従業員からだけでなく会社からもあっせんを申し入れることができます。 「紛争調整委員会」には、弁護士、大学教授等の労働問題に詳しい専門家が委員として入っています。この紛争調整委員会の委員のうちから指名される「あっせん委員」が、紛争解決に向けてあっせんを実施します。 あっせんの対象 労働問題に関するあらゆる分野の紛争(募集・採用に関するものを除く。)がその対象となります。 □ 解雇、顧止め、配置転換・出向、降格、労働条件の不利益変更等労働条件に関する紛争 □ いじめ・嫌がらせ等、職場の環境に関する紛争 □ 労働契約の承継、同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争 □ その他、退職に伴う研修費用の返還、会社所有物の破損に係る損害賠償をめぐる紛争など あっせんの進み方 あっせん開始通知書が送られてきます。これを受け取ったら、まず、あっせんに応ずるかどうか返答します。 応じないのなら応じないと連絡します。一方の当事者が応じなければあっせんは行われません。この場合、相手方は、あきらめるか、次の手段、裁判など、を準備することになります。 応じるのであれば、早めに自分の主張を書類にして送付します。送らなくてもあっせん当日に説明すれば良いのですが、当日は、時間の制約もあり、充分に説明しきれないこともあります。前もって送った方が良いでしょう。 指定の日に、当事者双方が労働局(窓口は総務部)に出向きます。一方の当事者から受任している特定社会保険労務士はあっせんに出席することができます。 あっせんのときは、あっせん委員から別々に事情を聴かれるので、お互いが顔を合わせて言い合うことはありません。まず、事情を聞かれて自分の主張を言います。 あっせん委員は、双方の事情を聴いてからあっせん案を提示します。あっせん案の中心は和解金の額です。不満であれば、相手方と話し合ってくれますが、折り合いがつかなければ、あっせんは終了します。 双方が受諾すると紛争解決となります。合意後は合意書を作成します。 その場で押印することは少なく、後日、完成した合意書が紛争調整委員会から送付されてきます。内容を確認し、記名押印し、紛争調整委員会に返送します。後日、双方の記名押印された合意書が送られてきます。 合意書に

労働審判を利用する

事業主との争いが起こったときは労働審判制度を利用することができます。労働審判委員会は地方裁判所に設置されています。 労働審判手続は、裁判官である労働審判官1名、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名、計3名で行います。 特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日で審理を終結することになっています。4か月程度で終結するのが目標です。 原則として調停から始まります。双方の言い分を聞いたうえで、委員会が調停案を示して解決を働きかけるのです。この調停で解決しないときは、委員会としての解決案を示します。これが労働審判です。 労働審判に不服のある当事者は、2週間以内に異議の申立てをすることができ、その場合には、労働審判はその効力を失います。 個別労働紛争解決制度と同様に、労働審判制度の調停も審判も強制ではありません。従業員、事業主のどちらかが不満があり異議を申し立てれば効力は無くなります。 次の段階は、一般の裁判(民事訴訟)です。 異議の申立てがないときは、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有します。 トップページ > 職場でトラブルになったら >このページ

個別労働紛争解決手段を利用する

まずは、総合労働相談コーナーに相談してみましょう。同コーナーは、労働基準監督署や労働局に設置され、トラブル解決のために各種制度の内容や手続きをアドバイスしてくれます。 個別労働紛争解決手段としては、以下の制度があります。 個別労働紛争と言うのは、労働組合と会社ではなく、個人と会社との紛争という意味です。 都道府県労働局長による助言・指導 都道府県労働局長が、個別労働紛争の紛争当事者に対し、その問題点を指摘し、解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な紛争解決を促進する制度です。 紛争調整委員会によるあっせん 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づいて、紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することによって、紛争の解決を図る制度です。 → 紛争調整委員会によるあっせん 障害者雇用促進法に基づく紛争解決の援助 障害者差別禁止及び合理的配慮の提供義務についての紛争について、調停等により紛争の解決を図る制度があります。 → 障害者雇用促進法の紛争解決援助 男女雇用機会均等法に基づく都道府県労働局長による紛争解決の援助制度 セクシュアルハラスメント、婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いなどについて、都道府県労働局長が、紛争当事者の意見を聴取し、助言・指導・勧告をすることによりトラブルの解決を図る制度です。 男女雇用機会均等法に基づく機会均等調停会議による調停制度 セクシュアルハラスメント、婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いなどについて、調停委員が、紛争当事者の意見を聴取し、紛争解決の方法として調停案を作成し、受諾を勧告することにより紛争の解決を図る制度です。 育児・介護休業法に基づく都道府県労働局長による紛争解決の援助制度 育児休業や介護休業取得に関しての不利益取り扱いなどについて、都道府県労働局長が、紛争当事者の意見を聴取し、助言・指導・勧告をすることによりトラブルの解決を図る制度です。 育児・介護休業法に基づく両立支援調停会議による調停制度 育児休業や介護休業取得に関しての不利益取り扱いなどについて、調停委員が、紛争当事者の意見を聴取し、紛争解決の方法として調停案を作成し、受諾を勧告することにより紛争の解決を図る制度です。 パートタイム労働法に基づく都道府県労働局長による紛争解決の援助制度 パートタイム労働者と事業主との間のトラブルについて、

労働基準監督署への申告

労働基準監督署への申告とは 労働基準法などの法律に違反していることを会社がやっている場合、従業員は労働基準監督官にその事実を告げることができます。これを「申告」といいます。 労働基準法第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。 2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。 労働基準監督官は、会社等に立ち入り調査をしたり、帳簿及び書類の提出を求め、使用者に対して質問できるなど、大きな権限を持っています。 申告を受けると、労働基準監督官が会社に出向くか、会社に対してに書類等を持参することを求めて調査を開始します。ただし、監督官も大変多忙なので、すぐに調査に取り掛かれるかどうかはわかりません。 条文にも「申告することができる」と規定されているだけで、その申告を受けた監督官が権限を行使しなけれならないとは規定されていません。 申告の方法 具体的には、会社等の所在地を管轄する労働基準監督署に行き、「労働基準法違反の申告に来ました」と申し出ます。 管轄する労働基準監督署は、都道府県労働局のホームページで調べることができます。 電話等で相談することもできますが、電話で説明しただけでは根拠や証拠が乏しいので、会社等へ立ち入り調査等を希望するの意であれば労働基準監督署に出かけた方がよいでしょう。 匿名で申告することもできますが、申告内容を信頼してもらうにはきちんと名乗った方が良いでしょう。 名前や所属を名乗っても、「会社には自分の名前を出さないでほしい」と希望すれば応じてくれます。 具体的な説明と証拠 申告する際には、的確に説明するために、申し出たい内容を、箇条書き程度で良いので文書にして持って行きましょう。 さらに、それらの違反を裏付ける証拠書類があれば持参するとより話がスムーズに進みます。 例えば、残業代を払ってもらえないというケースであれば、給与明細書やタイムカードの写しなどを持参するとよいでしょう。例えばですから、タイムカードに限りません。自分で記録した勤務記録でもなんでも、とにかく事情が分かるものを持参するように心がけましょう。 また、社長や上司の発言の記録も重要です。 例えば、 「当社は残業を認

残業代を払ってくれない

遠慮する必要はない サービス残業していませんか。 会社には、働いた時間に対して賃金を支払う義務があります。労働者は受け取る権利があります。 定時の労働時間以上に働けば、割増賃金を受け取る権利があるのです。遠慮する必要はありません。 もらっていない、これからでも請求したい、という方々に、未払い残業代請求に必要な基本知識をお伝えします。 在職中であれば強い行動はとりにくいものです。以下は、基本的に退職後に請求を行う場合について記載したものです。 証拠が必要です 証拠といっても難しく考える必要はありません。要は、私は毎日残業していましたと言うだけでは不足で、残業したことを裏付ける何かが必要だということです。 勤務時間の記録 自分が何時に会社に出て、何時に帰ったかという事実を証明するものとしては、自分が打刻していたタイムカードのコピーがあれば一番です。 時間が詳細に記載されていれば営業日報等も証拠になります。 パソコンの使用状況が分かるログも証拠になります。 メールには送受信の日時が残ります。その時間は仕事をしていたという証拠になります。 退社後にはアカウントを消去されることがあるので、遅い時間のメールをプリントしましょう。 帰りが遅くなって利用したタクシーの領収書も退社時間の証拠になります。手書き領収書だと時間が入らないので、タクシーメーターから出るレシートなど時間が印字されるものがよいです。 会社や第三者が作成している書類は、客観性が高いので良い証拠になりますが、そうしたものを補完する書類としては、自分や家族が作成したメモなども証拠として採用されることがあります。 実際に働いていたことも証明したい 出勤と退勤の時間を立証できても、 「勝手に残って、雑談していただけではないか?」「食事等にたっぷり時間をとっていたようなので実際に働いていた時間はほんの少しだ」 などと反論されることがあります。 これに的確な反論ができなければ、請求金額を減額されてしまうかもしれません。実際に労働していたことについても、自分なりの作業メモを作るなりして証拠を用意しましょう。 また、自分の仕事が、どういう手順で行われ、どういう過程を経て一件落着に至るか、業務上の流れについて整理しておきましょう。説得力が増してきます。 上司の指示などを忘れないようにメモすることが頻繁にあると思いますが、こうしたメ

パート勤務する場合は社会保険あり方がよい

社会保険のデメリット 社会保険に加入すると、 ① 社会保険料が引かれて手取り額が減る ② 配偶者の家族手当がなくなることがある というデメリットがあります。 ただし、上の①は、配偶者が自営業などで、本人が国民年金保険料を払っているときは、健康保険に切り替わることでお得になることが多く、その場合はメリットになります。 社会保険のメリット 社会保険のメリットとしては、 ① 自分の健康保険証を持てる ② 将来、厚生老齢年金をもらえる ということがあります。 一番のポイントは老齢厚生年金です。若い人は、老齢年金のことは実感がないと思います。また、「年金は破たんする」などという言説に惑わされて、お金を払うだけ損だと思い込んでいる人もいます。 年金はそんなに簡単に破たんしません。破たんが決まったかのような言説は本当に罪だと思います。老後に、老齢基礎年金だけになるか、老齢厚生年金が加わるかはエラい違いです。 さて、社会保険への加入・非加入は、本人が選択できるものではなく、労働時間や年収について一定の要件を満たすかどうかによって決まります。 条件については次の記事をご覧ください。 関連記事: 短時間労働者の社会保険加入条件 結論としては、せっかく働くなら、パートでも社会保険がつく職場が絶対によいです。 トップページ > 職場でトラブルになったら > 社会保険に加入させてくれない >このページ

社会保険の被保険者

社会保険の被保険者とは 会社で言う社会保険とは健康保険と厚生年金のことです。 健康保険の被保険者とは、健康保険料を納付することによって病気やケガなどのときに給付を受けることができる人です。 厚生年金保険の被保険者とは、厚生年金保険料を納付することによって将来年金を受け取ることができる人です。 適用事業所に使用されている人は、国籍・性別・年齢・賃金の額などに関係なく、原則として、健康保険と厚生年金保険の被保険者になることができます。 被保険者になれない人 「原則として」というのは、一部に加入できない人がいるからです。それは、次のいずれか一つに該当する人です。「ただし」書きの人は加入です。 1.日々雇い入れられる人。ただし、一ヶ月を超えて働く場合は2ヶ月目から。 2.2ヶ月以内の期間を決めて雇用される人。ただし、決められた期間を超えて雇用される場合は加入の必要があります。 3.季節的業務に4ヶ月以内の 期間を定めての雇用される人。ただし、雇用時に4ヶ月を超えることが予定される場合は、雇用時から加入の必要があります。 4.臨時的事業の事業所に6ヶ月以内の期間を定めての雇用される人。ただし、雇用時に6ヶ月を超えることが予定される場合は、雇用時から加入の必要があります。 5.個人事業の事業主。ただし、法人の場合は社長も被保険者になれます。 勤務時間による条件 社会保険(健康保険と厚生年金)に加入するには、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、その職場で常時雇用されている労働者の4分の3以上であるという条件があります。 ただし、従業員数500人超の場合、及び労使協定がある場合は勤務時間による加入条件が異なります。 → 短時間労働者の社会保険加入 外国人の社会保険加入 外国人に対しても日本人と同じ扱いをしなければなりません。 試用期間の扱い 試用期間であっても未加入にしてはいけません。入社の日など事実上の使用関係に入った日から被保険者としなければならないので、通常通り5日以内の資格取得届の提出が必要です。除外とされている「2月以内の期間を定めて使用される者」と混同してはいけません。 また、「事実上の使用関係に入った日」とは、報酬が発生する日をさします。たとえば、4月1日に採用され、4月10日に勤務を始めたという場合には、給料・賃金の支払い関係により資格取得日が決められ

短時間労働者の社会保険加入条件

社会保険の加入条件 健康保険と厚生年金を社会保険といいます。加入対象となるのは、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、その職場で常時雇用されている労働者の4分の3以上の人です。 つまり、正社員の週所定労働時間が40時間の職場では、30時間以上勤務しているパート勤務者は社会保険に加入することになります。 この場合、条件を満たしていると強制加入なので、入りたくないと言っても通りません。また、健康保険だけ、厚生年金保険にだけ加入ということは出来ず、両方セットとなります。 ただし、次の人は適用除外なので加入できません。 1.日々雇い入れられる人(1ヶ月を超えて引き続き使用される人は被保険者となる) 2.2ヶ月以内の期間を定めて使用される人(所定の期間を超えて引き続き使用される人は被保険者となる) 3.季節的事業(4か月以内)に使用される人(当初から4か月を超えて使用される見込みの人は初めから被保険者となる) 4.臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人(当初から6か月を超えて使用される見込みの人は初めから被保険者となる) 関連記事: 社会保険の被保険者 500人超の場合は週20時間以上で加入 500人を超える企業で働いている場合は、上述の4分の3ではありません。 同一事業主(法人番号が同じ)の被保険者数(短時間労働者を除く)で、1年の半分以上の期間500人を超えることが見込まれる場合は、特定適用事業主となり、次のすべての要件に該当する労働者については社会保険の資格取得をさせることになっています。 1.週の所定労働時間が20時間以上 2.雇用期間が1年以上見込まれる 3.賃金の月額が8.8万円以上(6.8万円を検討中と報道されています) 4.学生は除く 従業員数が500人を超えていなくても、労使協定を結べば、上記の基準を採用することができます。 社会保険の適用範囲は今後さらに拡大されます。上記の501人以上という条件は、令和4年(2022年)10月に「101人以上」、令和6年(2024年)10月に「51人以上」に2段階で引き上げられます。 途中で労働条件が変わったときの扱い 最初は、加入条件を満たさない労働時間で採用したのに、途中から長い時間働いてもらうことに変更したり、契約上の労働条件は変わっていないのに実質的に労働時間が長くなったりした場合は、変更になっ

社会保険に加入させてくれない

法違反があれば加入を求めることができる どういう場合が違反なのかは、後述する「法的に加入できない場合があります」を参考にしてください。加入できない場合に該当しないのであれば加入できるということになります。 加入できるはずなのに加入させてもらっていない場合は、まず、雇用主(上司)に相談しましょう。 まず相談から入るのは、何らかの正当な理由があるかもしれないからです。 納得できる理由を聞ければよいのですが、理由が納得できない場合は、さらに強く求めていくか、あきらめるか、どちらかの選択肢になります。 あきらめるというのはだらしないようですが、消耗の少ない方法です。 意図的に従業員を社会保険に加入させない事業主は、法令遵守意識が低い経営者と見込まれるので、結果的に加入することができても、陰に陽に嫌がらせをされる可能性があります。 闘争精神旺盛な人は対抗していけると思いますが、普通はきついと思います。 話しが通じない職場に頑張って居続けて、自分の体調を崩すようなことがあれば大変です。個人的には、違法に社会保険に加入させてくれない勤務先は、さっさと辞めた方がよいと思います。 辞めずに求めていくのであれば、まずは、法的な部分をしっかりと把握するために、年金機構・協会けんぽなどに相談してみましょう。 まず、事情を説明して、加入させてくれない状態が違法であるかどうかを確認しましょう。そして「確認請求」という手続きについて聞いてください。確認請求は、本来は事業主が行うことになっている社会保険加入手続きを、労働者本人が直接請求する手続きです。 そうした動きに対して、雇用主から嫌がらせや妨害などがあったときは、都道府県労働局や労働基準監督署に設置されている労働相談の窓口に相談しましょう。 こうした行動は、一人でなく、できるだけ同じ処遇を受けている同僚と一緒に行動することが大事です。 法的に加入できない場合があります 社会保険、この場合は厚生年金と健康保険のことですが、事業主は原則として全ての従業員を社会保険に加入させなければなりません。 ただし、一部の個人事業は加入義務がなく、強制加入事業所に勤務していても勤務形態によっては加入できない人がいます。 加入できるかどうかは2つの点から考えます。 まず、勤務先が法的に社会保険の適用を免除されている場合は、その事業所に勤務している人は加入できませ

配偶者の居住権について

制度の概要 建物の所有者が亡くなった時は、亡くなった人の配偶者であっても、建物の所有権などの権利を得ることができなければに同じ家に住み続けることができません。 ただし、6ヶ月間は無条件に住み続けることができます。これを「配偶者短期居住権」と言います。 さらに、遺言があれば終身同じ家に住み続けることができます。これを「配偶者居住権」と言います。 配偶者短期居住権とは 配偶者は、被相続人(亡くなった人)が所有していた建物に、被相続人が亡くなったときに住んでいれば、引き続き最低6ヶ月間住み続けることができます。 これを「配偶者短期居住権」といいます。 残された配偶者が住宅をすぐに追われるということがないように定められた権利です。 配偶者居住権と違って、遺言を必要とせず、遺産分割協議での合意も必要ありません。 居住が認められる期間は、 1.遺産分割によって誰に所有権があるか確定する日 2.相続開始から6ヶ月 の、いずれかの遅い日までです。 この権利は、ひとまず住み続けることができる権利です。 建物に住宅部分と店舗部分があるような場合には、居住権は住宅部分にだけ認められるので、店舗部分を自動的に使用することはできません。 また、短期居住権で住んでいる建物の一部を賃貸して収益を得ることは認められません。 6か月はすぐに過ぎてしまいます。所有権が他の相続人に移り、引越しを余儀なくされそうであればなるべく早めに引越し先を確保しなければなりません。 配偶者居住権とは 配偶者短期居住権は6ヶ月だけの権利ですが、もう一つ、配偶者居住権という制度があります。これは終身、つまり一生住み続けることができる権利です。 同居していなくても被相続人の財産に属した建物に相続開始時に無償で居住していた場合には、居住建物について無償で使用する権利を取得することができます。 ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には認められません。 遺言などが必要です 配偶者居住権は、遺言や遺産分割協議、家庭裁判所の審判等によって取得することができます。つまり、一定の手続きを踏まなければなりません。 登記が必要です 配偶者居住権は登記が必要です。法務局で、居住権を設定する登記手続きを行う必要があります。 登記の条件としては、 ① 遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされた場合 ②

遺産分割協議をする

遺産分割協議とは 遺産分割協議とは、相続人達が残された遺産の分割について話し合うことです。 いつまでに、という期限はありませんが、まとまらないと財産が宙に浮いて、だれも手を出せない状態が続いてしまいます。 法定相続人の相続割合が民法で定められていますが、その割合で相続しなければ法律違反というわけではありません。相続人の間で合意すればどのように相続することもできます。 例えば、いろいろな事情を考慮して、法定相続分ではなく自分がより多くもらうべきだ考えたとき、他の相続人と話し合って納得が得られれば、話し合いの結果の割合で相続することができます。 遺産分割協議書を作成する 話し合った内容を、遺産分割協議書という書面にして全員が捺印します。登記をするにも、預金をおろすにも、この書面の提出が必要です。口頭で「まとまったから」と言っても受け付けてもらえません。 不動産の所有権移転登記が伴う場合は、司法書士等の専門家に書面作成も併せて依頼するのが一般的です。 残された財産は、法定相続人の間で法定相続分で分割するのが原則です。また、話し合いで全員一致すれば、分割割合を自由に設定することもできます。 話し合いがまとまらないとき 相続人間で話し合いがつかない、つまり遺産分割協議書をつくれないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。先に遺産分割調停が行われます。 調停が成立しなかった場合には、審判手続に移って遺産分割の審判がでます。 遺言書が優先です 遺産分割協議が終わってから遺言書が見つかる場合があります。遺品整理は後でゆっくり進むことが多いからです。 この場合、遺言内容と違う内容で相続していれば、その違う部分は無効になります。原則としてやり直さなくてはいけません。 ただし、相続人と受遺者全員がその遺言内容を無視してよいという合意ができれば、その合意が優先されます。1人でも異議が出た場合はやり直しになります。 借金が残っているとき 相続では、借金なども相続しなければなりません。 借金が財産より多い時は、相続を放棄することで借金の相続を逃れることができます。 相続放棄すると相続権が次順位に移ります。 ただし、はじめから相続人ではなかったことになるので、代襲相続(代わりに子に相続させる)は起こりません。 債権者がいるときの相続放棄 借金等と関係なく、他の相続人に多く渡してあげたいな

介護などで貢献した人は寄与分を請求できる

寄与分 寄与分は、亡くなった人の生活や事業に貢献した人に報いるための制度です。 被相続人(死亡した人)を療養看護などで貢献した人がいるときは、その人が相続人であれば「寄与分」により相続分を増やしててもらうことが可能です。 寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の事業に関して、労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加に寄与をした者がいるときに、共同相続人の協議でこの者の寄与を考慮して、相続財産の配分で報いることです。 共同相続人の間で協議がまとまらないときは、寄与した者は家庭裁判所に寄与分についての請求をすることができます。 特別寄与分 寄与分は相続人が主張できる権利です。相続人でない場合は、親族であれば特別寄与分を請求できます。寄与分を「親族」に拡大したのが特別寄与です。 相続人ではない者、例えば、義父母の介護を行った長男の妻などは相続人ではないため、寄与分を使うことができません。 相続人以外の親族が被相続人に対する療養看護その他の労務の提供により被相続人の財産の維持又は増加について寄与した場合には、相続人に対して特別寄与分として金銭請求をすることができます。 親族の範囲は、6親等(いとこの孫ら)以内の血族と、3親等(甥や姪)以内の配偶者が該当します。事実婚や内縁など、戸籍上の親族でない人は請求できません。 寄与した親族のことを「特別寄与者」、相続人に対して請求する寄与に応じた額の金銭を「特別寄与料」といいます。 特別寄与料としてどの位のお金を請求できるかの基準は特にありません。介護日数や介護の内容、直接間接にかかった費用などを元に自分で算出して相続人たちに請求することになります。 相続人に対して請求しても、受け入れてもらえないときは、相続が開始したこと及び相続人を知った時から6ヶ月、または相続開始の時から1年以内に限り、家庭裁判所に審判の申し立てを行うことができます。 トップページ > 相続手続きの概要と注意点 >このページ

自営業者が亡くなったときは準確定申告が必要です

準確定申告とは 準確定申告とは、亡くなった人の確定申告です。 生前に確定申告の対象者であった人の1月1日から死亡日までの所得について、相続人は税務署に準確定申告を行う必要があります。 準確定申告は、被相続人が確定申告の対象となる自営業者などであったときに行います。 会社員などの場合は年末調整が行われるので、通常は準確定申告の必要はありません。ただし、給与が多い場合など、準確定申告が必要な場合があります。 準確定申告の義務者 準確定申告は、相続人がやらなければなりません。 相続人が1人であれば単独で準確定申告を行います。 相続人が複数いる場合は、各相続人の連署した準確定申告書を提出することが必要です。 事情があって、連署での申告が難しい場合、別々に準確定申告書を提出することもできます。 別々に申告を行う場合には、「申告書に他の相続人の氏名を付記」し、「他の相続人に申告内容を通知する」必要があります。 準確定申告を行わずに放置していれば、いずれ相続人に加算税や延滞税が課せられることになります。 申告書の書き方 申告者の氏名欄には、被相続人の氏名の他に「相続人代表者名」を記名します。 他の相続人については「確定申告付表」に相続人全員の名前、住所、相続分等を記入します。 用紙の表題の確定申告の先頭部に「準」という文字を付け足します。 申告と納付の時期 準確定申告は、相続人が相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に行わなければなりません。 納付すべき税額がある場合は、同期間内に納付しなければなりません。 被相続人の前年の確定申告が済んでいない場合は、併せて申告しなければなりません。2年分を申告することになります。 提出先は、被相続人の死亡当時の住所地の税務署です。相続人の住所地ではありません。 トップページ > 相続手続きの概要と注意点 >このページ

相続放棄が必要な場合もある

相続放棄とは 親が借金をかかえたまま亡くなったときは、相続をすると、借金も引き継ぐことになります。 相続した財産で払える範囲であれば良いのですが、もらえる財産を上回る借金があれば大変なことになります。 こういう場合、「相続放棄」という手段があります。 相続放棄とは、一切の遺産について権利を放棄してしまうことです。 借金などの負の遺産だけを放棄することはできません。相続放棄をすると、預金や不動産などについても同時に放棄することになります。 相続放棄には期限がある 手続きの期限に注意が必要です。期限を過ぎてしまえば、相続したことになります。 相続放棄の期限について、民法第915条は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内と定めています。この期間を「熟慮期間」といいます。 熟慮期間の開始は「相続があったことを知ったときから」です。一般的には、亡くなった日からになります。もし、死亡したことを知らなかったときは、知ったときからになります。ただし、普通は肉親の死を知らないということはないだろう、と思われるので、知らなかったことを納得させる理由が必要です。 3ヶ月以内に、借金の有無をしっかり調べなければなりません。 → 遺産の調査をする 熟慮期間の間に、預貯金を払い戻すなどして、一部の財産を使ってしまえば相続放棄ができなくなることがあるので注意しましょう。 3ヶ月という短期間では調べがつかないというほど複雑な場合は、家庭裁判所に対し、「熟慮期間延長の申立」を行えば、熟慮期間を延ばしてもらえる可能性があります。 3ヶ月経過してしまってからの相続放棄が認められる「特別な事情」についての判例があります。 最高裁判所第二小法廷昭和59年4月27日判決 相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて、その相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において上記のように信じたことについて相当な理由があると認められるときには、相続放棄の熟慮期間は相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識しうるべき時から起算すべきものである。 叔父とは長

遺産の調査をする

自宅調査の要領 相続人が複数いるときは、「あれがあったはずだ」などという争いが後で起こらないように、単独で行うのは避けましょう。 まず、被相続人が住んでいた家を調べます。机や金庫だけでなく、戸棚、タンス、押入れ、小屋などもすべて点検します。 順番を決めて、一つずつやるのが結局は近道です。たとえば、机であれば、引き出しを開けて、中の物を全部、床などの平面にならべてから、一つずつ点検しましょう。 現金や預貯金通帳、有価証券などの証書などがでてきたら、一つ一つリストに記載します。 貴金属や骨董品などについても同様です。 自宅以外に別荘などがあれば同様に調べます。 あるはずの預金通帳がでてこないときは、銀行などに確認しましょう。どのような書類が必要なのか聞いて準備しましょう。 → 預金口座の開示請求をする 遺言書が見つかったら、開封しないで家庭裁判所に持って行きましょう。開封すれば無効になります。扱いが分からないときは、司法書士などの専門家に相談しましょう。 借金を調べる 借金も相続財産の一つです。 役所から送られてくる固定資産税の通知、金融機関からの残高通知書などがないかチェックしましょう。クレジットカード会社からの通知で未払い残高がないかチェックしましょう。サラ金などからの葉書などで借金をチェックしましょう。 残っている書類や郵便物などをチェックして、借金があることが分かったら、その額などについて相手方とやり取りして確認する必要があります。 それらしき郵便物等がみつからなくても借金が無いとは断定できません。一定期間は請求しないという約束がある場合もあるからです。 そこで、借金の時効についても承知しておく必要があります。 借金は、弁済期又は最後の返済から一定の期間が経過すると消滅時効が成立します。その期間は、貸主か借主のいずれかが商法上の商人であれば、商事債権として5年であり、いずれも商人でない場合には一般的な債権として10年(民法167条)です。 民法改正(2020年4月1日施行)後は、商事債権であるかどうかにかかわらず、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間」で時効となります。 注意を怠って、調べもしないで放置していれば、借金があることを知らなかった、それほど多額とはおもわなかったと抗弁しても、認められな

遺言書がないか確認する

遺言書とは 法律の配分方法や相続人の協議にまかせるのでなく、自分の思った通りに財産を分配したい人が、財産の分割について書き残した書類が遺言書です。 特に、次のような場合に遺言書を作ります。 1.認知をしていない子がいる場合(生前にできることですが遺言でもできます) 2.親不孝な子に遺産を相続させたくない場合(同上) 3.特定の人に、遺産の全部、または大部分を相続させたい場合 財産が多いから遺言する、少ないから遺言しない、というものではないのです。 遺言書があると、遺言書で指示されたことが、法定相続分よりも優先されます。 相続手続きを進めてしまってから有効な遺言書が見つかると、大変困ったことになります。 遺言書を探す 相続人は、必ず遺言書を探さなければなりません。 「遺言なんてあるはずがない」という思い込みはいけません。 親が考えていることは知っているようで知らないものです。まして、疎遠であればなおさらです。あるはずがない、ではなく、あると思って探した方がよいでしょう。 机、タンス、仏壇など、ありそうなところをしらみつぶしに探しましょう。 自宅で見つからないときは、後述するように、法務局や公証役場の方も確認しましょう。 遺言書が見つかったら 遺言書を見つけてもすぐに開封してはいけません。家で見つかった遺言書は、家庭裁判所に持って行って検認を受けなければならない場合があるからです。 検認が必要なのは、法務局以外の場所、例えば自宅などに保管されていた自筆証書遺言と秘密証書遺言です。 検認とは「遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続」です。 検認が必要な遺言書は、検認が終わるまでは遺産を分けることができません。 関連記事: 遺言書を勝手に開封してはならない 公正証書遺言 公証人役場で作ってもらった遺言書を公正証書遺言といいます。公正証書遺言の原本は公証人役場に保管されるので自宅で見つかることはありません。自宅で見つかる可能性があるのは写しである正本か謄本です。 公正証書遺言は、所有権移転登記などの場面で正本を提示することで遺言の内容を実行することができます。正本がないときは公証人役場に請求すると交付してくれます。 公正証書遺言があることは、通常は誰かに知らされているものですが、誰も教えて

相続人を確定する

誰が相続するか 亡くなった人の財産を誰が引き継ぐかは、民法に定めがあります。 法定相続人といいます。 法定相続人には順位があります。 配偶者 亡くなった人に配偶者がいれば、その配偶者は優先的に法定相続人です。 内縁関係の妻等は相続人ではありません。遺言があるときは遺贈を受けることができます。また、特別縁故者として認められて財産をもらうこともあります。 配偶者以外に法定相続人がいない場合には配偶者のみが法定相続人となり、配偶者と他の相続人がいる場合には、配偶者とその相続人が法定相続人となります。 子ども 配偶者を別格として、第1順位の法定相続人は被相続人の子どもです。配偶者と子どもがいる場合には、両方が法定相続人になり、配偶者がいなければ子どもだけが法定相続人になります。 配偶者と子どもが法定相続人となる場合には、配偶者と子どもの法定相続分は2分の1ずつです。子どもが複数いる場合には、子どもの相続分である2分の1を子どもの人数で割って均等配分します。 養子縁組した子どもがいる場合には、養子も実子と同様に扱われます。法定相続分について、取扱いに差はありません。 配偶者が連れてきた連れ子がいる場合は、その連れ子と養子縁組していなければ、その子に遺産相続権はありません。 亡くなった人が認知した子どもは相続権が認められます。認知した子どものことを非嫡出子と言いますが、非嫡出子の相続分は、婚姻している妻との間に生まれた子ども(嫡出子)と同様です。 亡くなった人に前妻の子どもと後妻の子どもがいる場合には、前妻の子どもと後妻の子どもの両方が法定相続人です。それぞれの法定相続分は、同じです。 子がいなければ親 法定相続人の第2順位は親です。 亡くなった人に配偶者はいるけれども子も孫もいないとき、親が存命中であれば、配偶者と親が相続人になります。 配偶者と親の取り分割合は、配偶者が3分の2、親が3分の1です。両親ともにいる場合は親の分をさらに分割します。 亡くなった人の親が共に亡くなっているときで、その親、つまり、亡くなった人の祖父母が存命であれば、その祖父母が相続人になります。 亡くなった人は、配偶者も、子どもも孫もいないときは、親だけが相続人になります。 子も親もいなければ兄弟姉妹 法定相続人の第3位は兄弟姉妹です。子どもや孫、親や祖父母もいない場合には、兄弟姉妹も法定相続人となり

亡くなった後に戻ってくるお金

親が亡くなると、葬式代をはじめいろいろな支払いでお金が出ていきます。 一方、もらえるお金、戻ってくるお金もあります。 健康保険料の還付 国民健康保険、後期高齢者医療制度とも、保険料は前納するしくみになっているので、多くの場合、死亡後の保険料も払っています。そのため、死亡によって、保険料を払いすぎたことになり、これが戻ってきます。 基本的には、後日、還付のお知らせが届きます。これに、振込先などを記入して返送すれば、手続きは完了です。 葬祭費・埋葬費の給付 葬祭を行う人には、国民健康保険、後期高齢者医療制度から、葬祭費・埋葬費が支給されます。 葬儀費用の一部として支給されるもので、金額は1万円から7万円、市区町村によって異なります。 葬儀費用の領収書の写しや会葬礼状など、葬儀を行ったことを証明できる書類が必要です。 この給付は、市区町村などに申請をしないともらえません。亡くなってから2年経つと時効でもらえなくなります。 高額療養費の給付 亡くなる前は多額の医療費がかかるものです。国民健康保険や後期高齢者医療制度では1ヶ月あたりに自己負担する医療費の上限を設けており、それを超える分が健康保険などから給付される「高額療養費」という制度があります。 医療機関に「限度額認定証」を提出しておけば医療機関の窓口で請求されるのは上限額までなので、戻ってくるものはありませんが、「限度額認定証」を利用していなかった場合は、いったん請求された額を支払います。 上限を超えた分があとから請求することで戻ってきます。もし、死亡した人が65歳以上であれば、計算して自動的に還付してくれることになっていますが、遅い場合には、市区町村の国民健康保険の窓口に問い合わせましょう。 なお、生計を同一にする家族の医療費も合算できる「世帯合算」や、同世帯で1年に4回以上、自己負担額が一定額を超えると4回目から自己負担額の上限が軽減される「多数回該当」という制度があります。これに該当する場合は、待っていてもだめです。申請しないと受けられないので注意しましょう。 介護保険サービス利用料も、高額療養費と同じ仕組みがあります。「高額介護サービス費」という制度です。この場合は、1ヶ月の上限を超えているかどうかは市区町村が把握しており、払い戻しが受けられる場合は通知がきます。遅い場合には、市区町村の介護保険の窓口に問い合わせ

遺産や遺品の整理をする

不動産などの所有権移転手続き 残されたもののうち、土地建物などの不動産、自動車、電話などのように所有権移転の手続きが必要なものがあります。預金は解約しなければなりません。 まず、どのような遺産や遺品があるか整理してリストを作らなければなりません。 関連記事:遺産の調査をする このとき、借金などのマイナスの財産についてもきちんと調べる必要があります。相続すれば、借金も相続することになるからです。遺産や遺品を調べ上げて相続するかどうかを決めます。 関連記事: 相続放棄が必要な場合もある 金銭的価値のあるものを処分してしまうと相続放棄ができなくなってしまうことがあります。負債を含めた相続財産の全体を把握するまでは、ゴミの処分程度にとどめましょう。それも明らかにゴミであるものだけに。 相続するのであれば、必要書類を用意するなどして所有権移転などの手続きに入ります。 関連記事:相続による所有権移転や名義変更の手続き その他の遺産を処分する手順 遺産の中には、あまり金銭的価値がないものもあります。 被相続人が使っていた日用品、着ていた衣類、読んでいた本などです。お宝が混じっていることもありますが、大概は無価値です。 これらの物は、普通は家屋を相続した人が引き継ぐことになります。使えるものは引き続き使えばよいのですが、多くの物は処分することになります。 価値があるものを見つけたときは、勝手に処分してはいけません。指輪などの貴金属や高価な時計などは小さいこともあり気軽に形見分けしてしまいがちですが、きちんと換金価値を調べて、相続財産に入れなければなりません。不公平な相続になってしまうし、相続税の脱税にもなってしまいます。 自分が欲しいものを寄せる 大雑把にひっくり返しながら、欲しいもの、大事なものを選り分けます。 まず、被相続人が使っていた日用品、着ていた衣類、読んでいた本などのうち、自分が欲しいものを自分のものにします。 ただし、相続人が他にもいれば勝手にやってはいけません。整理するときは連絡してできれば一緒に分類するのが一番良いし、できない場合は、これはゴミとして処分、これは自分がもらう、などと整理したうえで点検してもらうようにしましょう。 処分してから「ゴミしかなかったから捨てておいた」と言っても、他の相続人が納得しないケースが多いものです。そんなことを言って良いものはちゃっ

死亡後に必要な手続き

市区町村へ死亡届を出す 7日以内に死亡届を出さなければなりません。これを出さないと火葬・埋葬に進めないので、優先的にやらなければならない手続きです。同時に火葬許可申請を行います。また、世帯主変更の必要があれば14日以内に世帯主変更届が必要です。 関連記事: 亡くなったことを市町村に届け出る 預金等を凍結する手続き 原則として、亡くなった人の預金を引き出してはいけません。金融機関になるべく早く亡くなったことを連絡しましょう。連絡を受けて預金が凍結されて、その後の手続きのやり方を案内されます。 預金が凍結されると、払い出しだけでなく、預金口座からの支払が制限されるので、公共料金などの定期的な支払いがある場合には支払方法の変更などの手続きが必要です。 ただし、葬式費用や入院費の支払などに必要な費用は、相続人であれば一定の範囲は払い出しすることができます。 関連記事: 亡くなった親の預金を払い出す必要があるとき 介護保険の資格喪失 介護保険の被保険者が死亡した場合は、介護保険資格喪失の手続きが必要です。死亡後14日以内に、介護保険被保険者証と印鑑を持参して、市区町村の介護保険担当課で手続きをします。 健康保険の資格喪失 死亡後14日以内に、被保険者証と印鑑を持参して、市区町村の国民健康保険課等の窓口で国民健康保険または後期高齢者医療制度の資格喪失の手続きをします。 会社勤務等で健康保険の被保険者であったときは、会社に連絡すれば手続きをしてくれます。 雇用保険の資格喪失 在職中に亡くなった場合はハローワークへの手続きは会社が行うので遺族は死亡を会社に連絡するだけです。 ハローワークで求職中であったり失業給付を受給していた場合は、遺族が、雇用保険被保険者証を添えて、資格喪失の届け出をしなければなりません。なお、遺族は本人がもらうはずだった死亡日の前日までの失業給付等を受けとることができます。 関連記事: 亡くなった人の雇用保険の手続き 年金受給者の死亡届 亡くなった人が年金をもらっている場合は、年金の方にも死亡届を提出します。ただし、住基ネットを使っている市町村は、市町村に届出すれば年金事務所にも届出が回ることになっているので必要ありません。 亡くなってからの年金を受け取ってしまえば返却しなければなりません。 関連記事: 年金受給者が死亡したときは 免許証などを返納する。 運転

葬儀費用はだれが負担するのか

葬儀費用の範囲 葬儀費用の範囲について、一つの参考になるのが、国税庁が相続税法に関連して示している区分です。 国税庁ホームページには、故人の死亡に関して発生した相続財産から差し引ける「葬式費用」について、次のように説明しています。 葬式費用に含まれるもの (1)葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。) (2)遺体や遺骨の回送にかかった費用 (3)葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。) (4)葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用 (5)死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用 葬式費用に含まれないもの (1)香典返しのためにかかった費用 (2)墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用 (3)初七日や法事などのためにかかった費用 葬儀費用の負担者 これらの費用を誰が負担するべきかについては、民法に明確な規定がないので、遺族の協議によって定まります。 参考になるのは裁判例です。裁判例もケースによって判断が異なるようですが、傾向としては、喪主が負担するべきとしているようです。 名古屋高裁平成24年3月29日判決 亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者、すなわち、自己の責任と計算において、同儀式を準備し、手配等して挙行した者が負担するのが相当である。 同儀式を主宰した者、というのは一般的には喪主です。ほかの相続人は負担しないということになります。 もちろん、相続人が合意すれば他の者が負担することも分担して負担することも可能です。 形式的な喪主も負担するのか なお、喪主が葬儀費用を負担するとしても、喪主とは形式的に喪主として名前が出ているものをいうのかという問題があります。 これについては、喪主とは形式的な喪主ではなくて、実質的に葬儀を主宰したものだという判例があります。 東京地裁昭和61年1月28日判決 葬式費用は、特段の事情がない限り、葬式を実施した者が負担すると解するのが相当である

配偶者が亡くなった後の姓

元の姓に戻したいときは 配偶者が亡くなっても、特に手続きしなければ、残された配偶者や子の戸籍はそのままです。姓も変わらず、配偶者の親族との姻族関係もそのまま続きます。 変えたいときは手続きをする必要があります。 結婚のときに姓を変えていた人は、配偶者の死亡後に手続きをすれば旧姓に戻すことができます。 旧姓に戻す手続きは、「復氏届」を提出するだけです。配偶者の親族の同意や家庭裁判所の許可などは必要ありません。 復氏届は、本籍地または住所地の市区町村の住民課に提出します。復氏届(役所にあります)、戸籍謄本、印鑑を持参してください。 復氏届は、死亡届を提出した後であればいつでも提出でき、提出期限はありません。ただし、死亡した配偶者が外国人であって、3ヶ月を経過していると家庭裁判所の許可が必要になります。 なお、姓が変われば、運転免許証、銀行口座、年金、健康保険、生命保険などの氏名変更手続きが必要になります。事前に、必要な書類を準備するなど、効率よく手続きを進める必要があります。 復氏後の戸籍 復氏届を出すときに、結婚前の元の戸籍(いわゆる実家の戸籍)に戻るか新しい戸籍を作るか、どちらかを選択します。 希望しても元の戸籍に戻れない場合もあります。 両親が死亡して兄弟姉妹が全員結婚(または死亡)した場合は、戸籍から誰もいなくなってしまうので、戸籍そのものが除籍されています。除籍された戸籍は戻すことができないので新しい戸籍をつくることになります。 また、子どもを自分の戸籍にいれたい場合は、元の戸籍に戻してはいけません。 戸籍は一組の夫婦と未婚の子供の二世代で構成することになっているので、祖父母・親・子供のように三代が同じ戸籍に入ることはできないからです。 子供を自分と同じ戸籍に入れるには後述する手続きが必要です。 復氏と相続関係 旧姓に戻っても、配偶者は亡くなった配偶者の遺族であり相続人であることに変わりありません。 したがって、遺産を相続することができ、相続した財産を返す必要もありません。 遺族年金の受給権もそのまま継続します。 注意しなければならないのは、負の遺産(借金など)も、旧姓に戻ったからといって無関係にはならないことです。配偶者が残した借金を引き継ぎたくない場合は、死亡から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し立てる必要があります。 配偶者の親族との関係 復氏届を提

位牌やお墓は誰が引き継ぐのか

祭祀財産の相続 祖先を祀ってあるお墓、仏壇、位牌などを「祭祀財産」といいます。 財産、と言ってもよほどの美術品的な価値があるものでなければ相続税はかかりません。 ただし、誰かが引き継がなければなりません。 長男が必ず承継しなければいけないというものでもありません。 民法では、祭祀財産を承継する者(祭祀主宰者)を次の順序で決めることにしています。 第1順位は、亡くなった人から指定された人です。 指定する方法に特別な要件はありません。遺言書などの正式なものでなくても、口頭で伝えるだけでも有効です。 子どもたちに限定されていません。相続人でない人を指定することもできます。 第2順位は慣習によって決めた人です。 亡くなった人の指定がなかった場合は、その地方の慣習によって決めることになります。 第3順位は家庭裁判所の審判です。 ここまでくることはあまりないと思いますが、一応、民法ではそうなっています。 実際には、相続人や親族が話し合って決めることになると思います。 継承したらどうするか 継承することが決まったら、定期的にお墓参りをし、仏壇にお水などを供え、お寺に年忌法要を依頼します。 なお、供養の仕方は宗派によって異なるので、分からないことはお寺さんに聞けば分かります。家で昔からやっているやり方があれば、そのやり方が優先です。 継承者がいない場合 お墓は土地についているものですから、その土地に住んでいないと管理が難しくなります。 子どもが遠方に住んでいたり、子どもがいない場合は、どうすればよいのでしょうか。 誰もお墓参りをしない、管理料も支払わないということになると、無縁墓という扱いになってしまいます。いずれは墓地の管理者によって暮石が撤去されてしまい、お墓自体がなくなってしまいます。 その間、草ぼうぼうになったりして周囲に迷惑をかけるので、無縁墓になる前にお墓を墓地の管理者に帰すことがあります。 お墓の跡継ぎがいない場合に、お墓から遺骨を取り出し、墓石を撤去し、更地に戻して寺院や墓地に返却することを「墓じまい」と言います。 お墓から取り出した遺骨は散骨や永代供養塔への合葬などで供養します。墓じまいに伴う読経等へのお布施、墓を解体する費用などに費用がかかります。 相談先は、お寺や墓石店などです。 位牌や仏壇も手続きとしては墓とおなじです。宗教的なものですから、お寺さんに読経を

喪に服すというのはどういうことか

喪に服するとは 喪(も)に服するというのは、亡くなった人のために行動を慎しむことです。服喪(ふくも)ともいいます。 服喪の期間 服喪の期間を喪中(もちゅう)といいます。一応1年というのが目安です。一周忌法要を区切りとして喪明けとします。 近年は四十九日で忌明けとすることが多く、多くの行動は四十九日を過ぎれば問題ないとされています。 どんなことを自粛するか 葬儀後の最初のお正月のお祝いを控えたほうがよいとされています。神社への初詣も控えたほうがよいとされています。 年賀状や年賀の挨拶も同様です。いつも年賀状を出している場合は、年賀状の代わりに喪中はがき(年賀欠礼のあいさつ)を出すのが一般的です。 結婚式を行うこと、参列することは1年間控えたほうがよいとされています。ただし、四十九日の忌明け以降であれば問題ないともされています。また、仕事関係者の結婚式であれば喪中でも問題ないとする人もいます。 観光旅行などは1年間控えた方がよいとされています。ただし、四十九日の忌明け以降であれば問題ないともされています。 事業や商売には服喪は関係ないとされています。会社の社長が亡くなっても事業は変わりなくに継続します。また、会社勤務も忌明けまで休むようなことは考えられません。親が亡くなっても葬式が終われば仕事を始めるのが通例です。 服喪の範囲 喪に服するの範囲は2親等までの親族が一般的です。 2親等でなくても同居していれば含まれます。配偶者の親族もこれにならいますが、配偶者の親族は1親等までにすることもあります。友人の場合は、どんなに近しい付き合いをしていても服喪の必要はないと考えられています。 なお、親等の数え方次のようになります。 亡くなった人の配偶者はゼロ親等です。 亡くなった人の父母、子は1親等です。亡くなった人の兄弟姉妹、祖父母、孫は2親等です。 地域・宗派によって異なるところがあります。ご了承ください。 トップページ > 身近な人が亡くなったら >このページ

仏壇をあつらえる前に知っておくべきこと

仏壇とは お寺では仏像を安置する壇を仏壇といいます。家庭では位牌などを納める厨子を仏壇といいます。 仏壇の設置時期 代々が住んでいる家では元から仏壇がありますが、初めて不幸があった家では仏壇が無い場合が多いと思います。 仏壇が無い場合は、初めは小机などで祭壇を作って位牌や遺影など安置し、後に新しく購入した仏壇に納めます。 なお、元々仏壇がある家でも、忌明けまでの間は新しい位牌などは仮の祭壇で祀るのが一般的です。仏壇の方は先祖を供養するものだと考えられているので、新仏が先祖の仲間入りをするまで、新しい仏さまは、一般的には忌明けまで、別に弔うべきだと考えられているのです。 注文するのはいつでも構いませんが、仏壇に位牌等を納めるのは一般的には四十九日などの忌明け以降にしましょう。 以前は、忌明け以降の盆、彼岸、命日がよいとされていましたが、仮祭壇の設置期間が長くなってしまうので、今はあまりこだわらなくなっているようです。 仏壇の選びかた 仏壇は宗派によって違いがあります。問題が生じないように、仏具店に行ったらまず宗派を伝えてアドバイスをもらいましょう。通販等で購入する場合も、宗派的に問題がないかきちんと確認する必要があります。 仏壇の飾り方は宗派によって違います。仏具も宗派によって違いがあります。よく確認して購入しましょう。 仏壇や仏具に要する費用はさまざまです。上を見ればきりがありません。仏具店で、予算、家のスペースなどを考えて家にふさわしいものを選びましょう。 予算などで仏壇をあつらえる余裕がなければ、家具店で両開きの扉がついた書棚のようなものを求めてもよいのです。元からある本棚を整理して安置してもよいでしょう。弔う気持ちがあれば形にこだわる必要はありません。 仏壇の設置場所 新しく仏壇を置くときに、どっちを向かせればよいのかなど設置場所で悩むことがあります。 基本的には仏様はどちらの方向が嫌いだということはないはずです。 しかし、しきたりや宗派の考え方も考慮した方がよいでしょう。代表的な考え方を紹介します。 南に向ける 仏壇を南に向け北を背にして設置します。お釈迦様は説法をするとき南を向いていたから仏壇も南に向けた方がよいという考え方です。曹洞宗・臨済宗が推奨しています。 本山を拝む 仏壇の前に座ったとき、拝む方向の延長線上にその家の宗派の本山がある方向に仏壇を設置

香典についてのあれこれ

香典とは 香典(こうでん)は、亡くなった方のご霊前に供える現金のことで、現金を香典袋に封入して葬儀に持参します。 香典袋 香典は市販の香典袋に入れて渡します。通夜と葬式の場合は、一般的には「御霊前」または「御香典」と印字されているものを用います。 宗派によって違いがあり、浄土真宗では「御仏前」「御香典」となります。故人の霊に捧げるのではなく、仏さまに捧げるという意味合いです。 香典袋の下半分に自分の住所氏名を記載します。筆で、それも薄墨でかくのが正式だとされていますが、ボールペン書きも普通に見かけます。自分の住所氏名等を記載するのは忌明け挨拶状などの発送先として使ってもらうためです。 「御香典」は仏教の場合ですから、神道など違う宗教の場合は考慮しなければなりません。神道では白紙の袋に「玉串料」などと書きます。白一色であれば「御霊前」でも可とされています。 キリスト教も香典に相当する金品を持参しますが、「御花料」などと記載することが多いようです。神道と同様に「御霊前」でも可とされています。 香典袋の裏には、封入した金額を書きます。遺族側が香典を整理する際に、金額が書いてあった方がありがたいのです。 葬式後の法要に招かれている場合は、葬式と法要は別の儀式なので、別途、現金を持参します。こちらの方は、仏教の場合は「御仏前」が一般的です。これは、葬式以後は仏になったという意味が込められています。 香典の渡し方 通常は、通夜または葬儀のいずれかに参列して受付に香典を差し出します。通夜か葬式の両方に参列する場合は通夜に渡し、葬式には持参しません。 通夜や葬儀にどうしても参列できない場合は、遺族宅に香典を郵送(書留便)してもかまいません。 通夜葬式に行けない場合に、自宅にお伺いして差し出すこともありますが、取り込んでいるところに持参するのは相手に負担をかけます。自分が通夜葬式に行けない場合は、参列する知人等に頼む方がよいでしょう。 ふくさに包んで持参した香典を出して差し出すのが正式ですが、最近は、ふくさを利用する人は少なくなりました。 受付では、「このたびはご愁傷様(ごしゅうしょうさま)です」などお悔やみの言葉を述べて差し出しましょう。受付で、必ず悔やみの言葉を言わなければいけない訳ではありません。無言でお辞儀をするだけの人もいます。 香典返し 香典をもらった方はお礼として何か品

亡くなった親の預金を払い出す必要があるとき

亡くなった人の口座は凍結される 死亡すれば、その後、その人の預金は引き出しできません。通帳を持参して口座の凍結を申し出なければなりません。申し出しなくても、金融機関が死亡を知って凍結することもあります。 亡くなる前でも、本人でない人が預金を払い出すのは問題があります。もし、生前に本人の了解を得て引き出した場合でも、いついくら払い出して、それはどのように使ったか、領収書付きで明細を残しておきましょう。使い込みを疑われて親族間のトラブルに発展することがあります。 凍結後は、原則としては、相続人が協議して、遺産分割協議書が作成されるまでは、故人名義の口座に手をふれることはできません。 凍結されるとこんな影響があります 病院や葬儀の支払いに故人の口座にあるお金を使うことができません。 公共料金やクレジットカードの自動引落など口座からの引き落としができなくなります。他の人の口座に変える手続きをするか、現金で払いにいかなければならなくなります。 振り込みもできません。 貸金庫を借りている場合は、開閉もできなくなるので、なかに預けたもの、例えば遺言書などを出すことができません。 葬儀の費用などに充てるため、遺産分割協議前でも故人の預金を引き出す方法があります。「仮払い制度」といいます。 仮払い制度を使えば払い出し可能 当面のお金が必要なのに、亡くなった人の預金からの払い出しには大変制約がありました。 2019年7月から、一定の条件のもとに、一定の範囲で、他の相続人の同意がない場合でも、預貯金を払いだして、医療費の清算や葬儀費用の支払いなどに使うことができるようになりました。 民法第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。 仮払い制度を使えば、遺産分割協議書が無くても、他の相続人の同意が無くても、一定の範囲内で個人の預金を払い出すことができます。引き出した分に

直葬は最も簡素な葬儀のやりかたです

簡素な葬儀と言えばまず家族葬が頭にうかびます。家族葬はごく近い関係の人たちだけで執りおこなう葬儀ですが、小規模であっても、お通夜や葬式などの一連の儀式はきちんと執り行います。 直葬とは これに対して直葬は、お通夜、葬式、告別式を執り行わず、遺族などごく近い関係者のみによって火葬のみを執り行う葬儀をいいます。 安置、出棺、火葬に際して、僧侶に読経してもらうなど宗教を組み入れることもできますが、まったく無宗教で行うこともできます。通夜や葬式、法事などは宗教上の儀式であって法律上の義務がないからです。 しかし、火葬と埋葬はやらなければなりません。 土葬は場所の問題があるので現実的にはできないと思われます。火葬は市町村が運営しており、地域によりますが、無料から数万円くらいかかります。お棺と火葬施設に運ぶ車を用意しなければなりません。お棺と車は葬儀社にお願いするしかありませんが、これも数万円かかるでしょう。 埋葬は、墓があればよいのですが、無い場合は墓を作るか、納骨堂にいれてもらうことになります。公共霊園の納骨堂は数万円からあるようですが、お寺の納骨堂は供養料も加わるので少し高めになります。 なお、墓地以外のところに埋葬してはならないという決まりがあるようですが、海などにまくという話しも聞きますから、正確なところはわかりません。また、墓がないからと自宅に遺骨を置いてあっても、特に罰則はないようです。 これらの料金は行政やお寺のホームページで調べることができます。 直葬の利点 日にちがかかりません。直葬は、法令に従って死後24時間以上遺体を安置した後に出棺をし火葬します。このため、火葬場の都合にもよりますが、概ね、2日程度で終えることができます。 費用が抑えられます。一般の葬式は通夜や葬式などでどうしても百万単位の費用がかかります。香典でだいぶ補えることもありますが補えると決まっているわけではありません。直葬を選択すると、一般的には数十万円程度の負担で行うことができます。 一般の葬儀だと関係者への連絡や参列者の対応などで気をつかいますが、直葬はそういう負担が軽減されます。 直葬の注意点 直葬であっても自分や少人数の家族だけで行うのは困難です。例えば、病院で亡くなった場合はすぐに病院から搬送しなければなりませんが、個人で搬送するのは難しいので、葬儀社に依頼しなければなりません。

一日葬は通夜を省略する葬儀のやりかたです

簡素な葬儀と言えばまず家族葬が頭にうかびます。家族葬はごく近い関係の人たちだけで執りおこなう葬儀ですが、小規模であっても、お通夜や葬式などの一連の儀式は2日かけて執り行うのが一般的です。 家族葬より簡素にしたい、しかし直葬ではさびしい。という場合に一日葬を選択することがあります。 一日葬とは 一般的な葬儀は、1日目にお通夜を行い、2日目の午前中に葬儀・告別式を行う2日かける葬儀です。一日葬というのは、文字通り、これを1日で終える葬儀のやり方です。葬儀を簡素にするやり方の一つです。 一日葬は、基本的には、お通夜を行わずに、葬式、告別式だけにするやり方です。なので、一般葬の一日葬、家族葬の一日葬もあります。直葬は一日葬の部類に入ります。 一日葬のメリット 葬儀を出すというのは、遺族にとっては心身の負担が大きいものです。通常の葬儀ではそれが2日間続きます。一日葬は1日だけ頑張ればよいので、遺族の負担が軽減されます。 費用の軽減にもなります。会場を借りる費用を軽減できます。通夜を行わないので通夜振舞いの費用がかかりません。 読経の回数が減るためお布施も少なくて済む場合があります。ただし、仏教の葬儀では、通夜と葬式は宗教上の意味が違うので、お寺によっては一部を省略するやり方に抵抗があるかもしれません。理解してくれるお寺も増えてきているようですが、特に菩提寺がある場合には一日葬で行いたい旨を伝えて了解をとる必要があります。 参列者の負担も減ります。特に遠方から来る人がいる場合、宿泊に伴う費用が軽減されます。 一日葬の注意点 一日葬が浸透してきているとはいっても、まだ誰もが理解できる葬儀ではありません。通夜という宗教的伝統的に重要な儀式を行わないことに高齢者などから苦情を言われる可能性もあるので、どう対応するか説明の仕方を考えておく必要があります。 家族葬を一日葬で行う場合は、一般的には、限られた範囲の人にだけ連絡し、一般の人には葬儀終了後に、「故人の遺志を尊重し、近親者のみで葬儀を執り行いました」という文書を郵送します。この際、一日葬で行ったことをあえて付け加える必要はないでしょう。 関連記事: 規模の小さな葬儀を家族葬という 関連記事: 直葬は最も簡素な葬儀のやりかたです トップページ > 身近な人が亡くなったら >このページ

規模の小さな葬儀を家族葬という

自分の葬式はなるべく簡素にやってほしいと思う人が増えています。そのように遺言で言い残す人もいます。 遺族の考えとそのときの経済事情などで簡素な葬儀を望むこともあります。 さて、一般的に簡素な葬式というと「家族葬」です。 家族葬とは 家族葬は、必ずしも家族だけで葬儀を行うということではなく、家族と特に故人を親しかった親族や友人だけで行う、規模の小さな葬儀のことです。 広く案内をしないで、個別に案内をされた人だけが集まる葬儀です。 規模が小さいだけで、宗教的儀式を省略するということではないので、仏式であれば僧侶に依頼して通夜や葬式を行います。 亡くなったことを知らなかったという苦情がでることがあります。どこまでの範囲に連絡をとるか慎重に決めなければなりません。 また、後から死亡を知って自宅に弔問に訪れる人もいるので、その時の応対をどうするか、香典返しはどうするか、などを考えておく必要があります。 一日葬 家族葬は小規模であっても、お通夜や葬式などの一連の儀式は2日かけて執り行うのが一般的です。これを1日で終える葬儀のやり方です。 関連記事: 一日葬は通夜を省略する葬儀のやりかたです 直葬 直葬は、お通夜、葬式、告別式を執り行わず、遺族などごく近い関係者のみによって火葬のみを執り行う葬儀をいいます。 関連記事: 直葬は最も簡素な葬儀のやりかたです トップページ > 身近な人が亡くなったら >このページ

弔辞を頼まれたらどうするか

弔辞とは 弔辞(ちょうじ)とは、葬式や告別式で、故人と親しかった人が、祭壇に向かってお別れの言葉を述べることです。弔詞(ちょうし)ともいいます。 原稿なしで語る人もいますが、一般的には書面を用意して読み上げ、元通りにたたんで祭壇に捧げます。 遺族から弔辞をお願いされる場合と、自ら名乗り出る場合があります。名乗り出る場合は他に弔辞を述べる人がいるか確認しましょう。述べる人数が多すぎると迷惑になってしまいます。また、依頼されたときは話すのが苦手でも断らないのが礼儀です。 弔辞の形式 長すぎてはいけません。通常は3分程度です。1000文字強が目安です。 正式には巻紙に薄墨で筆書きし「弔辞」と表書きした奉書紙に包みます。 パソコンで作成して白地の紙に薄墨風で印字し「弔辞」と書いた白の封筒に入れる略式で構いません。 ロール紙に対応するプリンターだと巻き紙風に仕上げることができます。一般の葬式であれば、普通のコピーしに数枚に分けてプリントしても構いません。 弔辞の構成 こうでなければならないという決まりはありませんが、一般的な弔辞は次の構成を意識してつくります。 前置き 「弔辞。〇〇〇〇さんの御霊前に謹んでお別れの言葉を申し上げます。」 (「弔辞」と最初に言います。最初の呼びかけはフルネームで) 訃報を聞いた時の思い 「〇〇さん。誠に急なことでした。先日お見舞いにお伺いしたときは、張りのある声で、まだまだ頑張るよ、と仰っておられたのに、こんなに早くお別れすることになるとは思いもよらないことでした。残念でなりません。」 (死亡の状況によって表現を変えます) 述べる人と故人との関係 「〇〇さんとは業界の会合でお会いしたのが最初でした。あれから早いもので30年もの歳月が流れました。」 故人の人柄や経歴、功績、エピソード 「〇〇さんは、〇〇大学をご卒業後、〇〇株式会社に入社され・・・・・・」 「あなたは責任感が強く・・・・・」 現在の気持ち 「今、お別れしなければならないのは痛恨の極みですが、〇〇さんのご遺志を引き継ぎ、これからも頑張って参りますので、御見守りいただきますようお願い申し上げます。」 冥福を祈る言葉 「これまでの永きに渡るご指導にあらためて深く感謝を申し上げ、弔辞といたします。安らかに御眠りください。」 自分の名を名乗る 「平成〇年〇月〇日 友人を代表して 〇〇〇〇」 こ

葬儀での喪主挨拶のやり方

喪主挨拶の心得 葬儀を主催する人を喪主といいます。喪主の大きな役割は、通夜、葬式、法要の際に、挨拶を述べることです。 ここで言う喪主挨拶は、参列者の前に出てひと言述べるあらまった挨拶のことです。思い通りに述べても構いませんが、慣習的に、一定の決まりごとがあることを承知しておきましょう。 一般的には通夜や葬式の終わりころに挨拶を述べますが、挨拶のタイミングはその地域のしきたりなどに従います。 何度か挨拶する機会があるので、少しずつ内容を違えた文案を用意しておくとよいでしょう。あれこれ考えすぎてしどろもどろになるよりは同じ文面を使ってもかまいません。 喪主挨拶の構成 一般的な喪主挨拶の組み立ては次のようになります。 1.初めに葬式に参列いただいたお礼を述べます 2.簡単に故人の経歴を述べます 3.亡くなった病名、いきさつを述べます 4.世話になった方々にお礼を述べます 5.今後のお付き合いのお願いを述べます 6.最後にもう一度お礼を述べます これを文章にすると次のようになります。 慣れない人はこれをコピペして、少しずつ文章を変更したり付け加えたりするとよいでしょう。 喪主挨拶の例 本日はお忙しいところ、父〇〇の葬儀にわざわざご会葬くださり誠にありがとうございます。 皆様から心のこもったお別れのごあいさつ、また、過分なご香典、ご供花をたまわり、誠にありがとうございます。故人に代わり厚く御礼申し上げます。 父は、〇〇として40年、定年退官後は自宅で趣味の園芸を楽しんでおりました。 昨年末ころに体調をくずし、入院して治療の結果だいぶ持ち直しておりましたが、〇月〇日夜、容体が急変し、わたくしども家族が見守る中、眠るように息を引き取りました。 父の生前中には、皆様方にひとかたならぬお世話をたまわりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。 わたくしどもは未熟ではありますが、今後とも故人同様、ご指導、ご鞭撻(べんたつ)いただけますようよろしくお願い申し上げます。 簡単ではありますが、これを持ちまして御礼のご挨拶に代えさせていただきます。 本日は誠にありがとうございました。 公式な挨拶以外の挨拶 式次第の中に組み込まれた喪主挨拶の他に、対面した参列者と挨拶を交わすことも喪主の役割です。 喪主が一人の弔問客と長く話し込んでいると、他の弔問客のご迷惑になります。できるだけ手早く会話