労働基準監督署への申告とは
労働基準法などの法律に違反していることを会社がやっている場合、従業員は労働基準監督官にその事実を告げることができます。これを「申告」といいます。
労働基準法第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
労働基準監督官は、会社等に立ち入り調査をしたり、帳簿及び書類の提出を求め、使用者に対して質問できるなど、大きな権限を持っています。
申告を受けると、労働基準監督官が会社に出向くか、会社に対してに書類等を持参することを求めて調査を開始します。ただし、監督官も大変多忙なので、すぐに調査に取り掛かれるかどうかはわかりません。
条文にも「申告することができる」と規定されているだけで、その申告を受けた監督官が権限を行使しなけれならないとは規定されていません。
申告の方法
具体的には、会社等の所在地を管轄する労働基準監督署に行き、「労働基準法違反の申告に来ました」と申し出ます。
管轄する労働基準監督署は、都道府県労働局のホームページで調べることができます。
電話等で相談することもできますが、電話で説明しただけでは根拠や証拠が乏しいので、会社等へ立ち入り調査等を希望するの意であれば労働基準監督署に出かけた方がよいでしょう。
匿名で申告することもできますが、申告内容を信頼してもらうにはきちんと名乗った方が良いでしょう。
名前や所属を名乗っても、「会社には自分の名前を出さないでほしい」と希望すれば応じてくれます。
具体的な説明と証拠
申告する際には、的確に説明するために、申し出たい内容を、箇条書き程度で良いので文書にして持って行きましょう。
さらに、それらの違反を裏付ける証拠書類があれば持参するとより話がスムーズに進みます。
例えば、残業代を払ってもらえないというケースであれば、給与明細書やタイムカードの写しなどを持参するとよいでしょう。例えばですから、タイムカードに限りません。自分で記録した勤務記録でもなんでも、とにかく事情が分かるものを持参するように心がけましょう。
また、社長や上司の発言の記録も重要です。
例えば、
「当社は残業を認めていない」
「どうしても申請するなら社長に報告するよ」
「残業代をもらってもその分賞与から引かれたらなんにもならないだろう」
などと上司が発言したのであれば、その発言内容を、自分の発言も含めて、発言した通りに記述しておけば、労働基準監督官により理解してもらえるでしょう。
監督署の対応の限界
条文に「この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては」とあります。つまり、「申告」は労働基準法違反についてしか使えません。
監督官は、例えば、残業代未払いという案件であれば、会社等に対して「違反状態を解消するように」という是正勧告を行ったり、悪質なケースであれば検察に送検することができます。
ただし、未払いになっている個々の残業代を、監督官が労働者の代理として取り返してくれるわけではありません。その部分は、使用者が払わなければならない債務の支払いを怠っているという「債務不履行」という民事上の問題になるからです。
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
過去の未払い残業代を会社等が払ってくれない場合は、斡旋、調停、民事裁判など、申告以外の解決方法を用いる必要が出てきます。
監督署が動けばほとんどの場合一定の効果があります。特に、経営者が不勉強なのに人の意見を聞かず、安易に労働基準法違反をしているケースでは目に見える効果が期待できると思います。
トップページ>職場でトラブルになったら>このページ