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裁判の準備をする

証拠集め 訴えるには証拠が必要です。 証拠には次のようなものがあります。 上司や同僚の発言の音声データ(ICレコーダーやフマートフォンの録音機能を使用して音声データを残しましょう。) メール内容の記録など(メールやLINEなども証拠になります。会社支給のメールアドレスだと退職で消去されることがあります。スクリーンショットなどで保存しておくとよいでしょう。またプリントしておくことも重要です。) 記録ノート 訴えてやろうと思った日から、しっかりと記録をつけましょう。 記録ノートには、 いつ(何月何日何時何分から何時何分までできるだけ詳しく) どこで(「会社」だけでなく、会社のどの場所で) 誰が(自分に何かした人の名前、そこに居合わせた人の名前) どんなことを言われた、あるいは、された 自分にどんな支障が出たか(動揺、不安感など小さなことも忘れずに) この5つを具体的に残すことが必要です。大雑把にまとめてはいけません。 記録は、字が下手でもボールペンの手書きで(パソコンだとあとで都合のよいように直したと疑われることがあります)書き、用紙一枚ごとに作成日時、作成者名(自分の名前)を書いておきましょう。 あとで読みなおしてみて、文章が下手だったとか、誤字があったとか、ちょっと書きすぎたというところに気がついても、書き直しはしないでください。書き直すと証拠としての価値が下がります。 弁護士事務所へ 裁判は原則として弁護士さんに依頼しましょう。電話で予約して相談に行きます(相談料についても電話で聞いてください)。 行くときは準備した証拠を持参しましょう。弁護士さんは損害賠償請求ができるか、裁判では勝てるかどうか見通しをたててくれます。また、費用の説明もあります。 当事者の役割は法律の解釈ではなく記録と証拠です。法律のことは弁護士さんにまかせましょう。 また、証拠類は、自分の手元にもコピーを残しましょう。弁護士さんが無くすることが無いとは言えません。 トップページ > 職場でトラブルになったら >このページ

業務委託や請負で働く

原則として労働者ではない 正社員や、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者として働く人は、「労働者」として、労働基準法などの労働法が適用されます。 これに対して、「業務委託」や「請負」という形態で働く人は、時間で拘束されて賃金を受け取るのではなく、注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われ、かつ、仕事の具体的な進め方について注文主の指揮命令を受けないため「事業主」として扱われます。 フリーランスという働き方もこの分類です。 フリーランスとは、会社などに雇用されないで、その会社の業務の一部または全部を受託する働き方です。どのような契約を結ぶかは自分の判断で選ぶことができますが、あまり選り好みしていては仕事が無くなるかもしれません。また、従業員であれば体調が悪ければ休むことができますが、フリーランスは理由によらず受託した業務を行わなければ契約不履行になるというリスクもあります。 業務委託契約や請負契約で働く人は、労働基準法などの労働法が適用されず、「労働者」としての保護を受けることができません。自由な働き方ができるメリットがありますが、労働法で保護された労働者と比べれば弱い立場にあることも確かです。 雇用されていないので、厚生年金保険、健康保険、雇用保険、労災保険などの、通常の労働者に適用される公的保険に加入できません。自分で、国民年金、国民健康保険などに加入する必要があります。 雇用保険の代わりになるものとしては、商工会議所などで受け付けている小規模企業共済制度などがあります。 労災保険には個人事業主も加入できる特別加入制度があります。収益が思うように上がらないと備えに回すお金はどうしても控えがちになりますが、万一のことを考えれば、無理をしてでも備えを充実させたいものです。 労働者とみなされることがある 業務委託や請負として使用されても、実態が雇用されているのと同じであれば、労働者とみなされることがあります。 業務委託や請負だ、フリーランスだと言われて仕事に従事しているが、 □ 仕事をする場所・時間を注文主から指定されている □ 仕事の仕方を細かく指示されている などの場合は、「労働者」と判断される可能性があります。 労働者であるかどうかの判断はとても難しいのですが、疑問に思うときは、労働基準監督署に相談をしてみましょう。 雇えば事業主としての責任がある 業務委

契約期間中の解雇等

契約期間中の解雇には強い制約がある 労働契約法第17条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。 2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。 やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間中は有期契約労働者を解雇することができません。 有期契約労働者は、期間の定めのない雇用契約の労働者よりも、その期間における地位が保証されているとされているので、「やむを得ない事由」というのは限定的に解釈しなければならないと考えられています。 したがって、単なる業績不振では足りず、企業が倒産したとか、天変地異などで事業継続が不可能になったなどの相当なやむを得ない事情がある場合に限られると解釈されています。 期間が短い労働契約の反復 2項は、契約期間について配慮を求める規定です。 どの位の期間であれば「必要以上に短い労働契約」になるかは示されていません。また、配慮義務であるため、違反したとしても、労働契約そのものが無効となるわけではありません。 ただし、不必要に短い有期労働契約の反復更新を継続していると、期間満了による契約終了を主張できない場合があると考えられています。 トップページ > 労働契約法のあらまし >このページ

期間の定めのない雇用契約への転換

5年勤務で無期雇用に転換 有期労働契約が繰り返し更新されて、通算して5年を超えたときは、その従業員が会社に申込みをすれば、期間の定めのない労働契約に転換できます。 この請求を会社は拒むことができません。 労働契約法第18条 同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。 なお、無期労働契約に転換したときに、直前まで適用されている労働条件は雇用期間を除いては変更されないことになっています。 無期労働契約に転換した場合、適用される就業規則で定年のさだめがあれば、定年に達したときには定年退職になります。 通算5年にならないケース 有期労働契約が途切れた期間が一定以上続いた場合には、当該通算契約期間の計算がリセットされ(クーリング)ます。 無契約期間が、 ① 6か月以上である場合、 ② その直前の有期労働契約の契約期間が1年未満の場合にあっては、その期間に2分の1を乗じて得た期間(1か月未満の端数は1か月に切り上げ)以上である場合、 のどちらかに該当する場合はクーリングされます。 なお、途切れた期間が1か月に満たない場合は、空白期間に該当しません。 対象にならない労働者 定年再雇用の場合と高度専門職の場合は、無期転換の対象から除外できる特別措置法による特例があります。 特例の対象者は「専門的知識等を有する有期雇用労働者」及び「定年に達した後、引き続いてその事業主に雇用される有期雇用労働者の労働者」です。 専門的知識等を有する有期雇用労働者(いわゆる「高度専門職」) 高度専門職とは、事業主との間で締結された有期労働契約の契約期間に事業主から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が1,075万円以上である者で、その専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に完了する業務(プロジェクト)に就く者をいいます。 高度専門職の場合の「5年」は、「プロジェクトの開始から完了までの期間」になり

労働者の安全への配慮

労働安全衛生法には、労働契約の内容として具体的に定めがなくても、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているという規定があります。 労働契約法第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。 例えば、過労死ラインを超える残業をさせて労働者が心身のトラブルをかかえたときは安全配慮義務違反になります。設備の定期点検を怠ったことが原因で事故が発生してしまった場合には安全配慮義務違反となります。 労働契約法には罰則がないので、安全配慮義務に違反しても罰則はありませんが、民事訴訟等では安全配慮義務違反があれば労働者からの損害賠償請求が認められる可能性が高くなります。 トップページ > 労働契約法のあらまし >このページ

有期雇用で働く

有期労働契約とは 1ヶ月とか、1年のように、期間を定めて雇用することを有期労働契約といいます。契約社員、アルバイトなどが該当します。 期間は原則3年以内です。 労働者が不当に長期間にわたる契約により拘束されることを防止しようという趣旨の定めです。 高度の専門的人材は最大5年の労働契約を結ぶことができます。 短い期間について、労働契約法では、短い期間の契約を反復更新しないようにする配慮を求めています。 雇止めのルール 雇い止めというのは、あらかじめ定めた契約期間が満了したときに、労働者が更新を希望していても更新しないで雇用関係を終了することです。 雇用契約の終了に伴う雇用関係の終了ですから、基本的には打ち切られてもやむを得ませんん。 ただし、これまでの更新手続きがルーズでほぼ自動的に契約更新していたような場合や、「これからもしっかり頼む」などと、上司から更新を期待しても当然と思わせる言動があった場合など、雇い止めが無効になる場合があります。 関連記事: 契約を更新しないと言われたら 無期転換について 同じ会社での雇用期間が、5年に達すると無期の労働契約に転換されます。 有期労働契約が5年を超えて反復更新されたときには、労働者が申込みすることによって無期労働契約に転換できます。使用者に拒否権はありません。 無期転換申込み権が発生する条件 1.有期労働契約の通算期間が5年を超えている 2.契約の更新回数が1回以上 3.同一の使用者に雇用されている。 通算5年を超えているとは 例えば、平成25年4月に1年契約で採用され、継続して更新されてきた有期労働契約の場合は、平成30年4月の更新契約をすれば無期転換申込み権が発生します。 3年契約であれば、1回目の更新をした段階でトータル6年の契約をしたことになるので、1回目の更新をして4年目に入ったときに無期転換申込み権が発生します。 該当する労働者が申込をしなかった場合でも、有期雇用契約が更新されれば、改めて無期転換申込みができます。 契約と契約の間に次のような空白期間があるときは、前の契約期間を通算しないことになっています。クーリング期間といいます。 空白期間が6ヶ月以上(直前の契約期間が1年未満ならその2分の1の期間)あれば、期間が連続しないことになります。 つまり、契約期間と契約期間に次のように間が空くと契約期間が通算されなく

複数の職場に勤務している人の労災保険

給付額は合算される パートやアルバイトなどで働いている人も労災に認定されれば労災保険からの給付を受けることができます。 パートやアルバイトなどの場合は、複数の職場で就業していることがあります。 給付の額はもらっている賃金によって決まります。 複数の職場で就業している労働者については、就業しているすべての事業場の賃金額を合算した額を元に給付額を算定します。 複数の職場で働いている人は、労災事故にあったときは必ず別の勤務先があることを申し出ましょう。以前は、その労災事故が起こった職場での賃金によって計算されていたので勘違いしないようにしましょう。 対象となる給付は、休業(補償)給付、遺族(補償)給付や障害(補償)給付です。「複数業務要因災害に関する保険給付」といいます。 労災認定の判定基準 労災に認定されるかどうかの基準の一つに、その人にかかっていた負荷の問題があります。これは、労働時間やストレス等をを総合的に評価するものです。 付加は、まず、それぞれの職場ごと個別に評価して労災認定できるかどうかを判定しますが、その上で、一つの職場で認定される負荷の基準を満たさない場合でも、すべての職場の負荷を総合的に評価して労災認定できるかどうかを判断することになっています。 副業禁止規定との関係 会社に副業禁止規定があるなどの理由で、会社に隠れて副業していた場合でも、この労災保険の通算は適用されます。 ただし、会社が知ることができなかったことの結果については会社に責任がないのが原則ですから、隠して副業をしていたケースでは、労災認定されたとしても会社に対する損害賠償請求の方は難しくなるかもしれません。 トップページ > 労災保険をもっと気軽に >このページ

勤務先が倒産してしまったら

失業給付を受給する ハローワークに求職の申し込みをすることで失業給付の基本手当を受給できます。 →基本手当の受給手続き 会社の倒産による離職は、普通の離職より、基本手当の支給開始時期と支給期間が優遇されます。 手続きには、会社が発行する離職票が必要です。倒産直後は会社も混乱していると思いますが、何はさておいても離職票を交付してくれるよう会社に頼みましょう。関与する弁護士が明らかになっていれば、弁護士の方にも協力してもらえるように申し入れましょう。 未払い給料を請求する 未払い給料は債権にあたり、従業員も債権者の一人になります。債権の額を裁判所に届け出て、破産管財人からの支払いを待つことになります。ただし、配当の順位によって配当される金額が違ってきます。 破産に関する債権には次のような種類があり、上から順に優先順位があります。 1.財団債権 2.優先的破産債権 3.一般的破産債権 4.劣後的破産債権 5.約定劣後破産債権 破産手続開始前3ヶ月間の給与債権が財団債権です。財団債権は他の債権よりも支払いが早く行われます。それ以外の給料は優先的破産債権とされます。 財団債権も優先的破産債権も他の債権より優先的に扱われますが、破産する会社は財産があまり残っていないのが普通ですから、配当は多くは期待できません。全く無い場合も珍しくありません。 残業代を含めた未払い給料の額は会社に計算してもらわなければはっきりしたところは分からないものですが、それでも全くの会社任せではいけません。会社も混乱しているときですから間違いも多いものです。もれはないか、しっかり確認しましょう。 未払賃金の立替払制度がある 未払いになっている給与や、退職金規程に基づく退職金がある場合は、労働者健康福祉機構の立替払制度を利用できます。 この手続きは労働基準監督署が窓口ですが、会社から賃金の証明をもらう必要があるので、まずは会社に申し入れましょう。 → 会社が倒産して賃金をもらえないときは 解雇予告手当を請求する 倒産の場合、普通は即時解雇になりますから、30日分以上の平均給与に相当する解雇予告手当を請求できます。 → 解雇について法律で決められていること その他の債権も確保する 社内預金や預け金がある場合は、通常は、法律の定めによって保全措置が取られています。その手続きをするように会社に申し入れましょう。

有期雇用は途中で辞めれないのか

辞めさせてくれない場合 契約期間1年の有期契約で採用されました。まだ3ヶ月ですが、家庭の事情で、どうしても仕事を続けることができなくなりました。その旨を社長に話したところ、契約期間の中途で退職するのは法律違反だ。と言われました。辞めることはできないのでしょうか。 民法には次のような定めがあります。 民法第628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 つまり、有期雇用の期間中であれば原則として辞めることができないので、社長の言っていることは基本的には正しいのです。 しかし、この条文には「やむを得ない事由」があれば辞めることができるとも書いています。 やむを得ない事由があれば辞めれる では、どういったケースであれば「やむを得ない事由」と判断されるでしょうか。 会社が採用時に示した労働条件を守らない、残業代を払わない、パワハラ・セクハラ等、違法な業務に従事させるなどのことがあれば、確実に「やむを得ない事由」に該当します。 上記の例のように「家庭の事情」だけではやむを得ないかどうか判断できません。面倒でも具体的に、親の介護、育児の手間、配偶者の転勤、自分の健康上の理由、学生であれば学業への影響など、仕事を続けられない理由を述べましょう。 このような理由を言われるとほとんどの会社は納得してくれるものですが、なかには「それは理由にならない」などと言う会社があるかもしれません。しかし、「やむを得ない事由」かどうかを判断するのは「会社」ではありません。やむを得ない事由かどうかは、最終的には裁判所が判断することです。 よって、理由を述べた上で強引に辞めたとしても、会社がとれる手段は裁判を起こすしかないのです。 裁判を起こしたとしても、従業員に相当の問題行為がない限り、それなりの「やむを得ない事由」を述べて退職した従業員に対しての損害賠償請求が認められることは通常では考えられません。 628条には、過失による場合の「損害賠償」についても記載されていますが、理由があっての退職であれば重大に考えなくてもよいでしょう。 「やむを得ない事由」が自分の過失によって生じたものだとしても、実際に損害が発

転勤してほしいと言われたら

会社は転勤を命令できる 会社に採用されるときには、賃金や仕事の内容などの労働条件について会社と取り決めをします。仕事の内容については、入社後最初に配属される勤務場所や従事する仕事については労働条件通知書などで提示されますが、当初の勤務場所や当初従事した仕事がいつまでも続くということはあまりなく、在籍しているうちに、会社の業務上の必要によって勤務場所や仕事内容が変更されることが一般的です。 これは、わが国の法律やこれまでの裁判例によって、会社に業務上の必要があれば、労働者に配置転換や転勤を求めることが原則として許されることになっているからです。 配置転換の目的は、欠員の補充、上級職への抜擢、職務能力の向上、取引先との癒着防止などがあります。 通常の場合、従業員は転勤を含む配置転換命令を拒否できません。 ただし、雇用されたときに、転勤しないことや職種を変更しないことを約束していたときは別です。また、会社に転勤させる人事権があるとしても、後述するように事情によってはその発令が無効になることもあります。 転勤命令を拒否したい場合 転勤は、本人が望んで受け入れるのであれば何も問題ありませんが、家庭の事情や家族の反対などで受け入れがたい気持ちになることもあります。 転勤しろと言われたらどうにもならないものでしょうか。 いくつか可能性があります。 就業規則はどうなっているか まず、就業規則に転勤についての定めがない場合です。 配置転換は法律的には就業規則の定めによって実施されます。したがって、就業規則に定めがなければ転勤命令を出せません。しかし、配置転換についてふれていない就業規則はほとんど無いと思われます。 雇用契約はどうなっているか 次に、雇用契約で勤務場所が限定されている場合は、会社は転勤を強制できません。 労働条件通知書や雇用契約書で勤務場所が明記されていればそれを根拠にすることができます。また、文書がなくても、入社時に口頭で転勤は無いという約束があるのであればそれも根拠になります。 転勤命令が不当ではないか 次に、権利濫用の問題があります。 転勤命令が「権利濫用」に当たればその転勤命令は無効になります。 判例によると、次のような場合は権利濫用と判断されます。 ① 業務上の必要性が存しない場合 ② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合 ③ 労働者に対し通常甘受す

出向してほしいと言われたら

出向とは 出向というのは、現在の会社での従業員という身分を維持したまま、別の会社に行って働くことを命じられる人事異動です。 今の会社を退職して別の会社に行くのは転籍と言います。次のページを参考にしてください。 → 転籍してほしいと言われたら 出向しなければならないか 出向は、会社の社員としての身分は残るものの、勤務場所が変わり、仕事の内容が変わり、勤務時間等の労働条件も違うかもしれないので不安になるものです 出向しろと言われたらどうにもならないものでしょうか。 以前は、就業規則に出向に関する条文があれば、無条件に従わなければならないという考えが主流でした。 今は、労働契約法の定めもあり、就業規則だけを根拠に出向を強制することはできません。 労働契約法の定め 会社は必要があれば従業員に対して出向を命じることができます。 しかし、出向命令が権利を濫用したものと認められる場合には無効となります。 労働契約法第14条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。 出向命令が権利濫用であるかどうかは、出向を命ずる必要性の有無、対象者の選定が適切かどうか等の事情が考慮されると、労働契約法に定められています。 有効な出向命令とは 出向命令が有効であるには次の条件を満たしている必要があります。 就業規則等での定め 就業規則に出向しなけならない旨の定めがある、または、採用時に同意がある場合には使用者には配転命令権が認められます。 就業規則等に根拠があっても、個別に職種や勤務地を限定する約束があれば配転命令は無効になります。 就業規則に出向についての定めがなければ、応じる義務はありません。 出向の必要性 労働契約法に明記されているように「必要性」の無い出向命令は無効です。 必要性には、会社の業績が悪いので余剰人員を子会社に出さなければならない、関連会社の技術力が不足しているので一定の期間応援が必要、などがあります。この場合、会社が説明する必要性は本当なのかということがよく問題になります。 さらに業務上の必要性が認められたとしても、「対象労働者の選定に係る事情」とあるので、出向者の人選におかしなところがあれば出向命令は無効になる可能

転籍してほしいと言われたら

転籍とは 転籍は、雇用契約を結んでいる会社を退職して、会社が指示した会社と新たな雇用契約を結ぶことです。 元の会社との雇用関係が続く出向とは違って、元の会社との雇用関係は無くなります。 会社によっては転籍も出向と呼ぶことがありますが、転籍と出向は全く異なるものです。打診を受けたときは、勘違いしないようによく注意しましょう。 転籍は同意が必要 「子会社に移ってくれ。」と言われましたが、業績の良くない会社で賃金も下がるようなので行きたくありません。断っても大丈夫でしょうか。 転籍は会社員にとっては重大なできごとです。 次の職場が決まっているにしても、現在の会社を解雇されるに等しいのですから、本人の同意がなければ転籍させられません。就業規則に「転籍させることがある」と記載されていても一人一人の個別同意が必要です。 転籍の話しが出されたら、転籍を強制することはできないし、転籍に同意しなかったことを理由に解雇することはできないのですから、落ち着いていろいろと質問しましょう。話し合いは穏やかにするべきですが、会社を出てくれと言われたわけですから質問くらいは遠慮することはありません。 条件を確認する 内心、転籍を承諾するつもりがあっても、条件も確認せずに承諾するのは危険です。転籍先の会社との雇用契約がどのような内容で、それは今の会社との雇用契約とどの点がどれくらい違うのかよく確認する必要があります。 まず、今の会社と転籍先となる会社の経営状況を聞きましょう。今の会社の経営が厳しい状況にある場合は、転籍が状況打開のきっかけになることもあります。ただし、担当者は転籍させようとするあまり、おいしい話しをする可能性があります。説明を鵜呑みにするのでなく、自分でもしっかりと調べましょう。 次に、転属先での従事する業務について聞きます。例えば、経理部に所属していたとして、転籍先でも経理の仕事ができればよいのですが、全く畑違いの仕事が予定されていることもあります。先の会社のことは分からないという返事であれば、誠実さを感じられないので、断る理由の一つになります。 就労する場所も確認しましょう。引っ越しや単身赴任を余儀なくされる場合もあります。また、転籍先の会社の転勤についてのルールも確認しておきましょう。行ったとたんに転勤という可能性もあるからです。 転籍前の賃金や賞与、退職金がそのまま転籍後の

退職してほしいと言われたら

応じる必要はあるか 「解雇する」ではなく、「退職してくれませんか」と言うことを「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」といいます。 退職勧奨すること自体は違法ではありません。ただし、ことさらに多数回あるいは長期にわたる勧奨や、いたずらに不安感をあおるような言動は違法性があります。 退職勧奨は会社側の希望にすぎないので強制力はありません。 退職勧奨による退職は会社都合退職です 「わかりました」と承諾した場合、会社から辞めてほしいと言われたはずなのに、いつの間にか自己都合退職にさせられていることがあります。 充分に注意しましょう。 退職勧奨に応じた退職は、「自己都合退職」よりも優遇される「会社都合退職」となり、雇用保険の「基本手当の受給額」で有利になります。 退職時の手続きの一つである「雇用保険被保険者離職証明書」を渡されたときに、退職理由の欄をしっかり読んで、事実と違うことが記載されていたら不用意にサインしないようにしましょう。 業績悪化に伴う退職勧奨 会社の業績が低下して、人員を削減するために退職勧奨をすることがあります。 「売り上げが下がっているのは君も知っていると思う。もう誰かに辞めてもらうしかないんだ。君は扶養家族もいないし、若いからどこへ行っても大丈夫だろう。君の将来を考えてできるだけ円満にしたいから退職願いを出してくれないか」 このような場合は、経営環境が本当に厳しいのであれば、会社の先行きが怪しいのですから、退職金の上乗せなどの条件次第では受け入れた方が得策の場合もあります。 ただし、会社が危ないという話しは誇張されていることがあります。部門の成績が良くないときに、とりあえず人数を減らして生産性をよく見せようとする上司の企みかもしれません。 なので、退職をすすめられても即答してはいけません。雰囲気におされて受け入れてしまっても「やっぱりもう少し考えてみます」と話しを戻しておきましょう。その上で、会社の状況を冷静に見渡し、信頼できる人に相談してみましょう。もっとも、誰が信頼できるかが難しいですが。 特定の人に辞めてほしい退職勧奨 会社の業績とは関係なく、特定の人に辞めたほしいが解雇という手段はとりたくない場合に、退職勧奨する場合があります。この場合はいろいろな言い方があります。 「係長が君を使いづらいと言っているけど、どうなんだね?」 「君はこの仕事に向いてい

雇用契約を更新しないと言われたら

雇い止めのルール 「1年契約で更新してきましたが、今年で最後にすると会社から言われました」 いつからいつまで雇用されるという雇用期間が決めて働いている場合は、その期間が終るときに雇用契約が終了します。これを「雇い止め」といい、違法ではありません。 しかし、場合によっては、雇止めを撤回させたり、予告期間をもらえる場合もあります。 有期雇用でない場合もある 社内で契約社員と呼ばれているので有期雇用だと本人が思い込んでいる場合もあります。契約社員でもすべてが有期雇用とは限りません。契約書や労働条件通知書などを確認しましょう。契約期間について記載されてなければ無期雇用契約ということになります。雇い止めは適用されません。 実質的に無期契約になっている 形式的には雇用期間を定めた契約であっても、実質的には無期契約と同様だと判断される場合がは雇い止めが認められない場合があります。 雇い止めが無効になる場合 雇止めが無効になるのは次のようなケースです。 1 雇用契約の更新手続きがルーズで書面の契約書を作っていない、または、作っていても特に協議も説明もなくほぼ自動的に更新が繰り返されていた 2 「いつまでも働いてほしい」などと声をかけられた 3 正社員と同じような仕事をして周りから期待されていた 4 これまでに有期労働者で雇止めされた人がいない 上記に一つ以上当てはまる場合は簡単に雇止めできません。どうしても辞めさせるというのであれば、解雇する場合と同様の基準が適用されます。これはパートでも同様です。「正社員じゃないから仕方がない」とあきらめる必要はありません。 まずは会社に、あらためて更新をお願いしましょう。また、更新できない理由も聞きましょう。 次に雇止め理由書の交付を求めましょう。労働者が雇止めの理由について文書を請求したときは、労働基準法第14条に基づく告示(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15・厚労省告示第357号)に基づいて使用者は遅滞なく交付する義務を負っています。 雇い止めでも予告が必要な場合 有期解約を締結している労働者(有期契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている者に限る)に対して、雇い止めをする場合には、少なくとも契約期間満了日の30日前までに予告しなければならないことになっています。 ですから、上記の条件に当てはま

解雇すると言われたら

解雇できない場合があります 次に該当する場合は、解雇できないことが労働基準法などに定められています。 □ 業務上の傷病により休業している期間と、その後30日間 □ 産前産後の休業をしている期間と、その後30日間 □ 女性であること、あるいは女性が結婚、妊娠、出産、産前産後の休業をしたという理由による解雇 □ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇 □ 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇 など 上記に該当する場合は、解雇を受け入れる必要はありません。 解雇を受け入れるかどうか決断する 解雇だと言われて「わかりました」答えれば決定してしまいます。そうした解雇は不当だと主張して争うこともできます。 まず、解雇を受け入れる場合について述べます。 業績不振等による整理解雇であれば、何らかの優遇措置があることが多いので、説明をしっかり聞きましょう。 不始末や能力不足等の個人的理由で解雇される場合は、解雇されてもやむを得ない事情があるとしても、解雇されたという事実は後々まで影響することがあるので、できるだけ解雇されるのは避けましょう。 自分に非がある場合には「退職願いを出すので解雇ではなく自主的な退職の扱いにしてくれませんか」と頼んでみましょう。場合によっては「退職してくれというのなら受け入れますが、これくらいのことで解雇されるのは納得できないので争うことにします」と(本心は争う意思がないとしても)主張するのも一手段です。受け入れてもらえれば通常の退職手続きになります。 解雇の場合、30日の解雇予告期間か30日分の平均賃金を受け取ることができます。 法律で認められた権利なので臆することなく請求しましょう。(ただし、懲戒解雇の場合で労働基準監督署長の承認を得たときは解雇予告はいらないことになっています) 解雇に納得がいかない場合は次の記述を参考に対抗してください。 解雇なのかあらためて確認する 「解雇だ」とはっきり言われたときは明確ですが、はっきりしない言い方をされる場合があります。その場合、会社の方は、自主的な退職にもっていこうと考えている場合が多いです。 「解雇なんですか」などと、解雇であることを確認しましょう。そして、何月何日で解雇なのか、解雇の理由は何か、この3つを質問し、誰がいつどこで言ったのかも含めてメモをとっておきましょう。答えが無くてもその状況をメモしてお

入社する前と話しが違う

やっと採用してもらえたと思ったら、話しがずい分変わってきた。こんなときの対応策について書きました。 求人広告に誇張があった 仕事をさがしていると、いろいろな求人広告を目にします。 まず注意したいのは、うのみにしないということです。ニコニコと元気に働く姿が掲載されているとしてもその写真の人が従業員とは限りません。従業員だとしてもそのようにポーズをとらされているだけだと考えたほうがよいです。 身も蓋もない話ですが、楽しい仕事や楽な仕事、抜きん出て待遇がよい仕事はそんなに簡単に転がっていません。あったとしても、そういう良いところは辞める人も少ないので求人数はとても少ないでしょう。だから、しょっちゅう求人を見かける会社は、なにかの問題があって従業員が定着していない会社です。 そう多くはないと思いますが、世の中にはとんでもなくブラックな会社もあります。うっかり応募すると危ない仕事や、法律に違反する仕事までさせられることがあるかもしれません。おかしいと思ったり、不安を感じたりするような場合は決して関わらないようにしましょう。 詐欺的なものとまでは言えないまでも、事実を伝えると誰も応募してくれないと考えて、実際よりも飾った条件で人を集める手法は、残念ながら行われています。 実際の姿が求人広告と違うことがいろいろな段階で分かります。いずれの段階であっても、臆せずに、違うところについて質問しましょう。他に就職先がないなどの理由で我慢するときもあるかもしれませんが、そもそも、このような手法で人を集める会社は、他にも我慢しなければならないことが次々と出てくるものです。早々に見切りをつけるのが上策です。 求人票と違う条件を提示された 広告だけでなく、ハローワークで閲覧する求人票にも注意が必要です。 賞与などに「見込み」「昨年実績」などと記載されていれば、あくまでも参考値です。そのまま支給されるとは限りません。 基本給などに「〇〇万円から〇〇万円」と記載されていれば、つい多い方を期待しがちですが、多くの場合は下の方を提示されます。 仕事の内容も、その会社の独自の業務名で書いてあることがあります。事務と書いてあっても、会社によって事務の守備範囲は広いのです。 こうした表示は、ずるいけれども違法ではないようです。 自分の場合は基本給かいくらか、支給される手当はどれかということは、聞かなければ分か

紛争調整委員会のあっせん

あっせんとは 従業員は、都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会にあっせんを申し出ることができます。従業員からだけでなく会社からもあっせんを申し入れることができます。 「紛争調整委員会」には、弁護士、大学教授等の労働問題に詳しい専門家が委員として入っています。この紛争調整委員会の委員のうちから指名される「あっせん委員」が、紛争解決に向けてあっせんを実施します。 あっせんの対象 労働問題に関するあらゆる分野の紛争(募集・採用に関するものを除く。)がその対象となります。 □ 解雇、顧止め、配置転換・出向、降格、労働条件の不利益変更等労働条件に関する紛争 □ いじめ・嫌がらせ等、職場の環境に関する紛争 □ 労働契約の承継、同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争 □ その他、退職に伴う研修費用の返還、会社所有物の破損に係る損害賠償をめぐる紛争など あっせんの進み方 あっせん開始通知書が送られてきます。これを受け取ったら、まず、あっせんに応ずるかどうか返答します。 応じないのなら応じないと連絡します。一方の当事者が応じなければあっせんは行われません。この場合、相手方は、あきらめるか、次の手段、裁判など、を準備することになります。 応じるのであれば、早めに自分の主張を書類にして送付します。送らなくてもあっせん当日に説明すれば良いのですが、当日は、時間の制約もあり、充分に説明しきれないこともあります。前もって送った方が良いでしょう。 指定の日に、当事者双方が労働局(窓口は総務部)に出向きます。一方の当事者から受任している特定社会保険労務士はあっせんに出席することができます。 あっせんのときは、あっせん委員から別々に事情を聴かれるので、お互いが顔を合わせて言い合うことはありません。まず、事情を聞かれて自分の主張を言います。 あっせん委員は、双方の事情を聴いてからあっせん案を提示します。あっせん案の中心は和解金の額です。不満であれば、相手方と話し合ってくれますが、折り合いがつかなければ、あっせんは終了します。 双方が受諾すると紛争解決となります。合意後は合意書を作成します。 その場で押印することは少なく、後日、完成した合意書が紛争調整委員会から送付されてきます。内容を確認し、記名押印し、紛争調整委員会に返送します。後日、双方の記名押印された合意書が送られてきます。 合意書に