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労災保険における生計維持とは

生計維持の基準 労働者の死亡当時、その収入によって日常の消費生活の全部または一部を営んでおり、死亡労働者の収入がなければ、通常の生活水準を維持することが困難となるような関係が常態か否かという基準があります。 国民年金・厚生年金のように、年収に関する数字は示されていません。 同居し、生活費の一部でも死亡した労働者に依存していれば、労災保険では生計維持関係にあったと認められます。 したがって、残された遺族が、妻、夫、子、父母であって、死亡当時同居していれば、相互に生計依存関係がない事が明らかに認められる場合を除き、生計維持関係が認められます。 孫、祖父母、兄弟姉妹の場合 孫、祖父母、兄弟姉妹の場合も、基準は同じですが、一般的には、孫にはその父母、祖父母にはその子という扶養者がいると考えられます。よって、原則的には死亡労働者と孫や祖父母の、生計維持関係は認められません。ただし、孫にとっての父母、祖父母にとっての子の収入が少ない場合には認められることがあります。 兄弟姉妹の生計維持関係も同様に、直接的に扶養義務のある親族がいる場合は原則的に生計維持関係は認められません。 一時的に生計依存関係がない場合 労働者の死亡当時において、当該遺族との生計依存関係が失われていても、それが一時的な事情によるものであるときは、生計維持関係が認められることがあります。 労働者の収入により生計を依存する事となった後まもなく死亡したとしても、労働者が生存していたとすれば特別な事情がない限り、生計依存関係が存続するであろう事が推定できるときは、生計維持関係が認められることがあります。 労働者がその就職後きわめて短期間の間に死亡したとしても、労働者が生存していたとすれば、生計依存関係がまもなく状態となるであろう事が明らかであれば、生計維持関係が認められることがあります。 社会保険の生計維持 遺族厚生年金等の社会保険における生計維持の扱いは若干違います。 →社会保険における生計維持とは トップページ > 労災保険をもっと気軽に >このページ

労災に認定されなかったら

仕事による傷病でも労災に認定されないことがある 労災保険は業務や通勤による負傷、疾病、死亡に対する補償をしてくれ制度です。 しかし、仕事中の怪我や病気なら何でも労災補償がおりるということにはなりません。 労災であるかどうかは「業務遂行性」と「業務起因性」によって判断されます。 業務遂行性とは 業務遂行性とは、労働者が労働関係のもとにあったときに起きた災害をいいます。簡単にいうと、仕事中に発生した傷病であるかどうかです。 業務起因性とは 業務起因性というのは、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます。簡単にいうと、傷病の原因が仕事にある場合です。 具体的には 仕事中に起きるほとんどの事故は労災に認定されますが、そうならないこともあります。 例えば、 会社の中で、トイレに行く途中で転んだとします。 トイレに行こうと立ち上がったところから、仕事から離れているわけです。なんとなく、業務起因性がないような気がするかもしれませんが、これは労災に認定されます。 トイレに行くというのは人であれば誰でも必要な行動なので、業務をする行為と一体だとみなされるのです。 しかし、携帯に私的な電話が入り、他人に聞かれたくないので仕事から離れて、携帯を操作しながら階段を駆け下りたら転んでしまった、というような場合は認定が難しくなる可能性があります。 → 業務上災害の要件 労災認定されなかった場合の対処 加害者に損害賠償を請求する 加害者に原因がある場合は、損害賠償請求をすることが可能です。 → 損害賠償を請求できる場合がある 労災に認定されない場合でも、会社や第三者の行為が傷病の原因になっていると判断できるのであれば損害賠償を請求することは可能です。 労災保険以外の保険を使う 労災に認定されないということは、健康保険が使えます。 一定の障害が残った場合は年金制度の障害年金を受給できます。 審査請求をする 労災が認定されないという判断が不服であれば、その決定を行った労働基準監督署長を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をすることができます。 次のリンクは、厚生労働省ホームページの「労災保険審査請求制度」へのリンクです。 労災保険審査請求制度 これでも覆らなければ、裁判所へ訴訟を起こすか、厚生労働大臣の下に置かれる、「労働保険審査会」へ再審査請求を行うという手

損害賠償を請求できる場合がある

会社に対する損害賠償請求 労災保険ですべての損害が補償されるわけではありません。労災保険が支払いの対象としていないものもあります。特に慰謝料など、精神的な損害に対する補償はありません。 労災事故の原因が事業主にある場合は、労働者は会社に対し、労災保険がカバーしていない損害分を請求をすることが可能です。 損害賠償請求は弁護士等の助力が必要です。経緯を具体的に、できるだけの証拠を添えて、弁護士に相談しましょう。 損害賠償請求の種類 損害賠償請求は、債務不履行責任に基づく慰謝料請求、不法行為責任に基づく慰謝料請求、使用者責任に基づく慰謝料請求があります。事案に応じてどの法的構成で請求していくかを選択します。 債務不履行責任に基づく慰謝料請求 事業主の責めに帰すべき事由による履行遅滞、不完全履行、履行不能により、労働者が損害を被った場合、労働者は損害賠償を請求することができます。 民法第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。 事業主には、労働者が安全で健康に働くことが出来るように配慮しなければならない、という義務があります。 安全配慮義務といいます。安全配慮義務を怠ったという「債務不履行」を理由に損害分を事業者に対して請求することができます。 労働契約法5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。 ただし、労災事故であれば安全配慮義務違反だと断定することはできません。事業主が安全配慮義務を怠ったかどうかについての証明は容易でないことがあります。 不法行為責任に基づく慰謝料請求 民法は、不法行為について精神的損害の賠償請求を認めています。 民法第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。 使用者責任に基づく慰謝料請求 使用者責任とは、従業員が職務の執行について行った不法行為について、会社が責任を負うというものです。 セクハラ等の損害賠償請求に使うことができます。 民法

脳・心臓疾患と労災認定

仕事が原因であれば労災認定 脳梗塞などの脳血管疾患、心筋梗塞などの心臓疾患は、加齢や食生活等の日常生活や遺伝等の要因によって発症します。 しかし、仕事が原因で発症する場合もあり、これで死に至ることを「過労死」といっています。 仕事が原因で発症したのであれば、労災保険の支給対象になります。 日常生活や遺伝等の影響もあるので、脳・心臓疾患の労災認定については、一定の基準を設けています。 認定要件 業務による明らかな過重負荷があるかどうか。 これを3つに分けます。 1.異常な出来事 2.短期間の過重業務 3.長期間の加重業務 異常な出来事 発症直前から前日までの間に、異常な出来事に遭遇したか。 例えば、 業務に関連した重大な人身事故等に直接関与したことによって、著しい精神的負荷、または著しい身体的負荷を受けた。または極めて劣悪な作業環境下で仕事をしていた。 短期間の過重業務 発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)に、特に過重な業務についたか。 労働時間については次の基準で判断します。 発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる 発症前おおむね1週間以内に継続した長時間勤務が認められる 休日が確保されていない そして、その他に、労働時間以外の負荷要因、出張や交替勤務、作業環境などを総合的に検討します。 長期間の加重業務 発症前の長期間(発症前おおむね6ヶ月間)にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務についたか。 労働時間の長さが大きな要素になります。 時間外労働が1ヶ月あたりおおむね45時間を超えるかどうかが一つの基準です。 45時間以内であれば、発症したとしても業務との関連は弱いと評価されます。 45時間を超えると、長くなるほど発症と業務の関連が強くなると評価されます。 発症前1ヶ月間におおむね100時間、 または、発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって(発症前2ヶ月間、発症前3ヶ月間、発症前4ヶ月間、発症前5ヶ月間、発症前6ヶ月間のいずれかの期間)、1ヶ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働をしている場合は、 業務と発症の関連性が強いと評価されます。 そして、その他に、労働時間以外の負荷要因、出張や交替勤務、作業環境などを総合的に検討します。 総合判断 もともと持っていた病気や、その治療状態等も考慮して、業務上の疾患に該当するかどうか

精神障害と労災認定

精神疾患が労災になることがある 精神障害が労災として認定されるかどうかには3つの条件があります。 まず1は、 認定基準の対象となる精神障害を発病していることです。また、診断書が必要なので、病院で受診し、精神障害と診断されていることが必要です。 2は、 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められることです。 これは、いろいろな具体例が示されています。労災認定のポイントなのでこのページではこれを中心に説明します。 そして3は、 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないことです。 労災保険は、業務上の傷病に対して補償するものなので、例えば、自分の病気や、家庭の不和など、業務以外に原因があれば適用が難しくなるのです。 ただし、業務以外の心理的負荷や個体的側面があったとしても、その程度によっては労災に認定されることもあります。 業務による心理的負荷の判定 上記の3つの条件のうち、6ヶ月間の業務による心理的負荷について説明します。 心理的負荷の強さを、数字などで示すのは容易ではありません。しかし、なんらかの方法で数値化しないと公平な判定ができないので一定のルールを決めています。 具体的には、業務による心理的負荷評価表を使います。 → 厚労省の「精神障害の労災認定」パンフ この表を用いて心理的負荷が「強」であると評価されれば労災認定の条件を満たすことになります。ここでは、一部を抜粋して説明します。 特別な出来事があったか 「特別な出来事」に該当する出来事が認められた場合には、心理的負荷の総合評価が「強」になります。 具体的には次のようなものです。 □ 生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした(業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む) □ 業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く) □ 強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた □ その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの □ 発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の

腰痛と労災認定

慢性的な腰痛も労災になることがある ある会社の倉庫です。ひと段落したところですが、Aさんが腰をさすっています。後輩の一人が声をかけました。 「なんか腰、つらそうですね」 「うん、前から腰が悪いんだけど、この頃ちょっとひどくてね。朝、起き上がるのがつらいよ」 「最近重い荷物が多いですからね。病院に行った方がいいですよ」 Aさんは、自分でも病院に行った方がよいと思っていたところなので、その声に押されるように言いました。 「そうするかなあ、今日は少し早めに帰らせてもらうわ。悪いなあ」 「大丈夫ですよ。お大事に」 病院で 「どういう仕事をされているんですか」 「倉庫で荷物の出し入れをしています」 「重いんですか」 「普段はそれほどでもないのですが、時々重いのが入ってきます」 「重いものを持つのはしばらくやらない方がよいですね。悪化すると動けなくなりますよ」 「う~ん」 会社で上司に 「病院に行ったら重いものは持たない方がいいって」 「そんな、君の仕事で物を持てないってなったら致命的だぞ。君だけを特別扱いする訳にはいかないから」 「それどういう意味ですか。辞めろということですか」 「そこまでは言っていないだろう。みんなに迷惑を掛けない方法を考えろということだよ」 「それじゃ言いますが、これは労災じゃないですか。毎日重いものを扱っているからこうなったんじゃないですか。」 そこまで言うつもりはなかったのですが、上司の冷たい反応に反発してついエスカレートしてしまいました。 家に帰って奥さんに 「今日、コレコレシカジカで・・・」 「困ったわね。でも、仕事が原因だと私も思う。絶対労災よ」」 「会社は労災にしてくれそうもないよ。今までも腰を痛めた人は何人もいるけど、労災という話しは聞いたことがない」 「そうだ。近所に社会保険労務士事務所ができたじゃない。よく分からないけど、労災の手続きもしてくれるんじゃないかしら。明日にでも相談してきてよ」 社会保険労務士事務所で 「実は、コレコレシカジカで・・・」 「なるほど。腰痛が労災になるケースはあります。でも、ならない場合もあります。あなたの場合はどうなのか、もう少し質問させていだきますね」 「最初に痛くなった時の状況を教えてください」 「腰痛が始まったのはだいぶ前ですが、先週の金曜日に特に重い荷物が集中してだいぶ疲れたんですが、そのあとに痛み出

労災保険における第三者行為

第三者行為とは 労災保険でいう第三者行為とは、次の通りです。 1.事故が第三者の行為によって発生した 2.その事故の責任が第三者にあり、損害賠償の義務が発生している このような場合は、業務上の事故であれば労災保険も適用されますし、同時に加害者に対して損害賠償を請求する権利を持つことになります。法律的にいえば、加害者に対して不法行為責任又は債務不履行責任に基づく損害賠償請求権を取得するのです。 しかし、同じ理由で加害者と労災保険の両方からとることは問題があります。また、第三者行為の場合は、事業主や国ではなく、一番の責任は加害者にあります。 そこで、次のようになります。 労災保険の給付を先に行った場合には、労災保険の制度から、加害者に対して、支払った給付分を請求することがあります。これを求償といいます。 労災保険の給付の前に加害者から賠償金を受け取った場合には、賠償金の範囲で、労災保険の給付が止めらることがあります。これを控除といいます。 代表的な第三者行為の例に、通勤中の交通事故があります。 第三者行為による事故の場合には、第三者行為災害届を提出する必要があります。 第三者行為災害届 第三者行為災害について労災保険の給付を受けようとする場合には、労働基準監督署に、「第三者行為災害届」を2部提出することが必要です。 労災保険の給付に係る請求書と同時又はこの後速やかに提出する必要があります。 正当な理由なく「第三者行為災害届」を提出しない場合には、労災保険の給付がー時差し止められることがあるので注意が必要です。 「第三者行為災害届」を提出する際、所定の念書も提出することになっています。この念書には、次のような内容が記載されています。 1.相手方と示談しようとする時は必ず前もって労働基準監督署長に連絡する。 2.相手方から金品を受けた時は遅滞無くその内容を労働基準監督署長に連絡する。 3.示談内容によっては労災保険給付が受けられない場合があることを承知する。 4.相手方に白紙委任状は渡しません。 5.私が受けた労災保険給付については、政府が私の有する損害賠償請求権を取得することを承知する。 トップページ > 労災保険をもっと気軽に >このページ

複数の職場に勤務している人の労災保険

給付額は合算される パートやアルバイトなどで働いている人も労災に認定されれば労災保険からの給付を受けることができます。 パートやアルバイトなどの場合は、複数の職場で就業していることがあります。 給付の額はもらっている賃金によって決まります。 複数の職場で就業している労働者については、就業しているすべての事業場の賃金額を合算した額を元に給付額を算定します。 複数の職場で働いている人は、労災事故にあったときは必ず別の勤務先があることを申し出ましょう。以前は、その労災事故が起こった職場での賃金によって計算されていたので勘違いしないようにしましょう。 対象となる給付は、休業(補償)給付、遺族(補償)給付や障害(補償)給付です。「複数業務要因災害に関する保険給付」といいます。 労災認定の判定基準 労災に認定されるかどうかの基準の一つに、その人にかかっていた負荷の問題があります。これは、労働時間やストレス等をを総合的に評価するものです。 付加は、まず、それぞれの職場ごと個別に評価して労災認定できるかどうかを判定しますが、その上で、一つの職場で認定される負荷の基準を満たさない場合でも、すべての職場の負荷を総合的に評価して労災認定できるかどうかを判断することになっています。 副業禁止規定との関係 会社に副業禁止規定があるなどの理由で、会社に隠れて副業していた場合でも、この労災保険の通算は適用されます。 ただし、会社が知ることができなかったことの結果については会社に責任がないのが原則ですから、隠して副業をしていたケースでは、労災認定されたとしても会社に対する損害賠償請求の方は難しくなるかもしれません。 トップページ > 労災保険をもっと気軽に >このページ

労災保険を受給できるのは労働者か遺族です

労災保険における労働者とは 労災保険は労働者とその遺族に給付を行います。この場合、労働者とは何かという定義が問題になることがあります。 労働者とは、会社に雇われて仕事をしているすべての人です。アルバイトやパートタイマーが対象になるのはもちろん、国籍も関係ありません。 採用内定者が研修出社しているときの事故では、たんなる見学であれば労働者ではありませんが、何らかの実務を行うと労働者と認定されることがあります。労働基準監督署長が総合的に判断して労働者認定をすることになっています。 派遣社員が派遣先でケガをした場合には、派遣社員は派遣元に雇用されているので、派遣元の労災保険を使用して治療や休業補償を受けることになります。 建設業での請負による事業では、原則として元請が一括して労災保険に加入しているので、元請の労災保険を使用します。 同居の親族は原則として労働者ではない ごく小規模な事業だと家族が一緒に働いていることがあります。例えば、父親が経営する商店で働いている息子は、父親に使用されていますが、労災保険では、労働者ではなく「同居の親族」という扱いになります。同居の親族は、仕事中にケガをしても労災保険を使うことができません。 ただし、普通の従業員のように働いて、勤務時間を管理されて、普通の従業員並の給与をもらっている場合は、労災保険の対象となることがあります。この場合も労働基準監督署長が可否を認定します。 役員は原則として労働者ではない 役員が仕事上のことでケガや病気になった場合、労災が使えないだけでなく、健康保険も使えません。健康保険は仕事上でのケガや病気には給付をしてくれないのです。(隠して受診することもあるかもしれませんが法律違反です) 登記上は役員であっても、実態は一般労働者と変わらない働き方をしている役員を「使用人兼務役員」といいます。使用人兼務役員は、使用人としての部分にだけ労災が適用されます。取締役工場長が、工場の中で機械を操作していて被災したような場合です。 親会社の従業員が子会社等に役員として出向している場合は、元の会社で従業員としての身分を保っていたとしても、出向先の会社で役員であれば、原則として労災は適用されません。 労災保険における遺族とは 労災保険が適用される状況で従業員が亡くなってしまったときは、遺族が給付を受けることができます。 労災保険にお

労災保険は通勤中の事故にも適用されます

通勤災害にも適用される 労災保険は、業務上の事故病気に対して給付を行う公的保険制度です。 なので、制度の趣旨からいえば、まだ業務に取りかかっていない通勤中の事故は対象外ですが、特別の扱いで、労災保険の対象に含められています。 ただし、用語の定義は法令で定められているので、私たちが日常会話で使っている意味と異なるところがあるので注意が必要です。 通勤とは 労災保険における「通勤」とは、就業に関し、次に掲げる移動をすることです。 1 住居と就業の場所との間の往復 2 就業の場所から他の就業の場所への移動 3 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動 労災が適用される条件 条件があります。 1 合理的な経路及び方法により行うこと 2 業務の性質を有するものは除く 3 移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。ただし、例外もあります。 以上の要件を満たせば、労災保険法における「通勤」に該当し、労災保険から各種給付を受けることができます。 用語の解説 用語の意味について説明します。 「就業に関し」とは 労災保険における通勤は、就業に関連していなければなりません。 つまり、通勤は、移動行為が業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるものであることが必要です。 したがって、いつもと同じ時間帯に会社方面に向かう電車に乗っていたとしても、買い物や友人宅の訪問など、目的が異なれれば通勤ではありません。 また、早出や遅刻など、本来の出勤時刻と時間的にある程度の前後があっても就業との関連性が認めらるので通勤になります。 「住居」とは 移動の起点または終点が住居であることが求められています(例外もあります)。 住居とは労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところをいいます。 通常は家族のいる所から出勤するが、別にアパート借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパートに泊り、そこから通勤するような場合には、家族の住居とアパートの双方が住居と認められます。就業のためという目的であれば、ホテルなどが認められることがあります。 「就業の場所」とは 業務を開始し、又は終了する場所です。一般的には、会社や工場等の本来の業務を行う場所をいいますが、現場仕事の労働者

なぜ労災隠しをするか

労災があっても所定の届け出をせずに、健康保険を使うように指示されるケースが少なくないようです。これは、いわゆる労災隠しです。主な原因には次のようなものがあります。 労働保険料が上がるから 自動車保険は無事故のドライバーほど保険料が安く、事故が多くて何度も保険金を受け取っているドライバーは割高になります。労災保険もこれと同様に、メリット制といって事故の件数が多いほど保険料が高くなる場合があります。 つまり、保険料が上がることを恐れて労災隠しをすることがあるのですが、現実には、上がらない場合も多いのです。例えば、通勤中の事故などの災害に関しては会社に責任がないので保険料は上がりません。 小規模な事業所の場合も上がりません。労災保険率を引き上げたり、引き下げたりする仕組みは、メリット制という制度が適用される場合です。メリット制の対象となる会社の範囲(有期事業は除きます)は「労働者が100人以上いる会社」または「労働者が20人以上100人未満で災害度係数が0.4以上の会社」と定められています。 まず、20人未満の会社はメリット制の対象から外れています。いくら労災を使っても労災保険率が引き上げられたりすることありません。 20人以上100人未満の場合は、ちょっと複雑ですが、いずれにしても事故がおこれば必ず保険料が高くなるというのは間違いです。 世間体を心配する 事故が表ざたになると世間体が悪いとか、取引上不利になるという心配から労災隠しをするケースがあります。 現実には、マスコミに報道されるような大きな事故でない限り、労災の手続きが世間にばれることはありません。 下請け仕事をしている場合には、労災にしないように元請けから圧力がかかることがあると聞きます。違法な圧力ですが、取引関係を盾にとってのことですから、困ったことです。しかし、どんな理由があっても労災かくしは許されません。 監督署が来ることを嫌がる 1回の事故で直ちに労働基準監督署が調査に入ることは、めったにありません。しかし、重大事故の場合や、軽い事故でも何度も重なれば、事実確認のため、あるいは再発防止指導のために調査が実施される確率が高いのは確かです。 労働基準監督署の調査があれば、その事故のことだけを調べて帰ることはあまりありません。ついでに、就業規則やタイムカード、労働者名簿、賃金台帳くらいは見ていきます。そうする

労災保険の使い方

労災にする方法 労災保険の使い方ですが、何も難しいことはありません。病院の窓口で「労災でお願いします」というだけです。健康保険証を出してはいけません。 なお、労災の指定医療機関でないと手続きが面倒になることが多いので、可能な限り労災の指定医療機関に行きましょう。事前に電話で確認するようにしましょう。 労災指定病院では請求用紙を用意しているところもあります。その場合は、窓口でもらった書類を会社に出せば、会社の証明欄などを記入して、会社の方で労働基準監督署に提出してくれます。 病院の窓口に用紙がないときは、会社の担当者に頼んで、「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式第5号)(業務災害用)」を入手しましょう。労働基準監督署に置いてあります。厚生労働省ホームページからダウンロードもできます。 初回の受診時には、書類の準備が間に合わないことが多いものです。それでも、とりあえずの気持ちで健康保険を使ってはいけません。病院窓口との打ち合わせや会社との連絡など、多少面倒ですが、初めから労災でやってもらってください。 病気だと、最初は仕事に原因があると気付きづらいこともあるので、健康保険で受診することがあります。この場合でも、仕事に原因があると気付いた時点で、病院の窓口に申し出なければなりません。 なるべく労災病院か労災指定医療機関にする どこの医療機関でも治療を受けられるので、緊急の場合には労災指定がある病院かどうかを気にする必要はありません。できるだけ早く治療を受けてください。 業務災害や通勤災害は原則として労災保険からの給付が受けられて、原則として治療費を自己負担する必要はありません。 ただし、駆け込んだ先が「労災病院か労災指定病院」であるかそうでないかでは支払い方が違います。 労災病院ではない病院や労災指定ではない医療機関では、原則として、被災者が治療費を一時的に負担して、あとで被災者名義の指定口座に給付額が振り込まれます。 つまり、一時的に立て替え払いしなければならないのです。高額の治療を受けたり、治療が長引いたりすると大きな金額になります。会社が肩代わりしてくれることもあるようですが、会社には肩代わりの義務はありません。 なお、労災の指定医療機関でない病院で診療を受けたときは書式と提出先が異なります。用紙は、「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号)(業務災害