労災保険における労働者とは
労災保険は労働者とその遺族に給付を行います。この場合、労働者とは何かという定義が問題になることがあります。
労働者とは、会社に雇われて仕事をしているすべての人です。アルバイトやパートタイマーが対象になるのはもちろん、国籍も関係ありません。
採用内定者が研修出社しているときの事故では、たんなる見学であれば労働者ではありませんが、何らかの実務を行うと労働者と認定されることがあります。労働基準監督署長が総合的に判断して労働者認定をすることになっています。
派遣社員が派遣先でケガをした場合には、派遣社員は派遣元に雇用されているので、派遣元の労災保険を使用して治療や休業補償を受けることになります。
建設業での請負による事業では、原則として元請が一括して労災保険に加入しているので、元請の労災保険を使用します。
同居の親族は原則として労働者ではない
ごく小規模な事業だと家族が一緒に働いていることがあります。例えば、父親が経営する商店で働いている息子は、父親に使用されていますが、労災保険では、労働者ではなく「同居の親族」という扱いになります。同居の親族は、仕事中にケガをしても労災保険を使うことができません。
ただし、普通の従業員のように働いて、勤務時間を管理されて、普通の従業員並の給与をもらっている場合は、労災保険の対象となることがあります。この場合も労働基準監督署長が可否を認定します。
役員は原則として労働者ではない
役員が仕事上のことでケガや病気になった場合、労災が使えないだけでなく、健康保険も使えません。健康保険は仕事上でのケガや病気には給付をしてくれないのです。(隠して受診することもあるかもしれませんが法律違反です)
登記上は役員であっても、実態は一般労働者と変わらない働き方をしている役員を「使用人兼務役員」といいます。使用人兼務役員は、使用人としての部分にだけ労災が適用されます。取締役工場長が、工場の中で機械を操作していて被災したような場合です。
親会社の従業員が子会社等に役員として出向している場合は、元の会社で従業員としての身分を保っていたとしても、出向先の会社で役員であれば、原則として労災は適用されません。
労災保険における遺族とは
労災保険が適用される状況で従業員が亡くなってしまったときは、遺族が給付を受けることができます。
労災保険における遺族とは、労働者の死亡時にその労働者の収入によって生計を維持していた配偶者(内縁関係も含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(受給順位の順)です。
→生計を維持している(労災保険)
妻以外の遺族には、生計維持関係の他にも条件が付きます。
夫:60歳以上又は障害
子:18歳に達する日以後最初の3月31日まで又は障害
父母:夫と同じ
孫:子と同じ
祖父母:夫と同じ
兄弟姉妹:子と同じか夫と同じ
これらの受給資格者のうち、最も先順位の者が受給権者となって、遺族(補償)年金を受給します。つまり、妻がいる場合は、妻に全額支給されます。最も先順位の受給権者が複数になってしまう場合には支給額が等分されてそれぞれに支給されます。
上記の受給権者がいない場合は、55歳以上60歳未満の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹の順で60歳までは支給停止ですが受給権をもちます。
配偶者については、いわゆる内縁関係にある者も、一定の証拠があれば労災給付を受けることができます。法律上の妻がいて、かつ、内縁の妻がいるような場合には、基本的には法律上の妻が労災の給付を受けることができます。法律上の妻との関係が、全く形骸化しているというケースでは、例外的に内縁の妻の権利が認められたことがあります。
最先順位の遺族が死亡や婚姻などにより受給権者でなくなった場合は、次順位の遺族が受給することになります。この制度は転給といって労災保険独自の制度です。
国民年金や厚生年金から支給される遺族年金は、最先順位者だけしか年金を受け取れませんが、労災保険の遺族年金は、先順位者が受給権を失っても、受給資格者がいる限り、年金が支給され続けます。
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