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事務所衛生基準規則と労働安全衛生規則

事務所の温度

事務所で仕事をしている人は、多くの場合エアコンが効いて快適だと思うのですが、なかには、省エネということであまり使わせてもらえなかったり、温度設定が高かったりなどで、暑いなかで仕事している人もいるかもしれません。

実は、事務所の温度については法令の定めがあります。

事務所衛生基準規則という厚生労働省令です。

そこに、

事務所衛生基準規則第5条
3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下になるように努めなければならない。

とあります。

下が低すぎるように思いますが、それでもずい分快適な事務所を目指しています。

だから、省エネだからつけない。設定温度は30度だ。などという職場は、厚生労働省令に違反していることになります。

ただし、「空気調和設備を設けている場合は」となっているので、エアコンがない場合については温度基準がありません。また、省令にエアコンを設置しろとは書いていません。

いずれにしても、暑いと生産性が落ちるのですから、事務所の適切な温度は労働者のためだけでなく経営者にとっても大事なことです。暑すぎる寒すぎるについては、どしどし申し出た方がよいでしょう。

休養室休憩設備

たとえスペース的に難しくても、一定の人数がいる職場では、休養室を設置しないと事務所衛生基準規則に違反します。

事務所衛生基準規則第21条
事業者は、常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が、が床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。

が床とは、横になるという意味です。

具合が悪くなった人が横になれる場所を確保しなさいという規定です。男女別に必要です。

スペース的に、どうしても休養室を作ることが難しい場合は、間仕切りのついたてと、折り畳み式の簡易ベッドを用意しておくという方法も考えられます。

体調不良で横になりたいのに場所がないために悪化してしまった場合は、会社の安全配慮義務違反が問われる可能性があります。

休養室と間違えやすいのが休憩室です。

事務所衛生基準規則第19条
事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない。

休憩室ではなく休憩の設備となっています。従業員が休憩時間等にリラックスできるように、一定のスペースにソファーなどを設置することが考えられます。休憩の設備は従業員数にかかわらず設けなければなりません。

救急用具及び材料

事務所や作業場に救急箱を備えている会社が多いと思います。なぜ救急箱があるかというと、次のような規定があるからです。

労働安全衛生規則第633条
事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に周知させなければならない。
2  事業者は、前項の救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。

出血、骨折、やけどなどの不意の事故に応急措置をすることが想定されています。

労働安全衛生規則第634条
事業者は、前条第一項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。
一  ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
二  高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
三  重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等

最低限の備えが求められているので、一通りそろえるとよいでしょう。

また、AED(自動体外式除細動器)も検討すべきでしょう。

ただし、なんでもあれば良いというものではありません。

事務所に置いている救急箱に、風邪薬や頭痛薬を備えている会社もあります。従業員への福利厚生的に考えていると思われます。

ただし、薬品というものは、一般的な風邪薬や解熱鎮痛剤などの第2類医薬品や、ビタミン剤など比較的リスクの低い第3類医薬品であっても、登録販売者がいないと販売できないなど、慎重な管理が求められているものです。市販薬であっても、誰もが服用可能な状態にしていれば、過量服薬、誤用、アレルギー、副作用などの事故があれば会社の責任にもなりかねません。

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