解雇されれば特定受給資格者になる
雇用保険を受給できる人にはいくつかの区分がありますが、「特定受給資格者」に該当すれば、給付日数が加増されるなどの優遇措置を受けられます。
この特定受給資格者に該当する場合の一つとして、「解雇等によって離職した者」が挙げられています(同法23条2項2号)。
自己の責に帰すべき重大な理由があれば特定受給資格者にならない
しかし、「自己の責に帰すべき重大な理由」で解雇された場合には、同じ解雇でも「特定受給資格者」に該当しないことになっているので、給付日数が優遇されることはなく、一般の受給者と同じ給付日数の分しかもらえません。
一般の受給者と同じ分はもらえる
逆に言えば、「自己の責に帰すべき重大な理由」による解雇(多くの場合は懲戒解雇のことです)でも、一般の離職者(自己都合退職者等)が受給する分の基本手当は受給できます。
会社に対する不始末があっても、自分の給料から天引きされていた雇用保険の保険料が無に帰すことはないということです。
ただし、「自己の責めに帰すべき重大な理由」による場合には自己都合退職の2か月より多い3か月間の給付制限を受けます。
自己の責めに帰すべき重大な理由と会社の懲戒事由は違う
どういうことが「自己の責めに帰すべき重大な理由」にあたるかは、厚生労働省が出している「雇用保険に関する業務取扱要領」に次のように示されています。
① 刑法の規定に違反し、または職務に関連する法令に違反して処罰を受けたことによって解雇された場合
② 故意又は重過失により事業所の設備又は器具を破壊したことによって解雇された場合
③ 故意又は重過失によって事業所の信用を失墜せしめ、又は損害を与えたことによって解雇された場合
④ 労働協約または就業規則に違反する次の行為があったために解雇された場合
・極めて軽微なものを除き、事業所内において窃盗、横領、傷害等刑事犯に該当する行為があった場合
・賭博等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす行為があった場合
・長期間正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
・出勤不良または出欠常ならず、数回の注意を受けたが改めない場合
・事業所の機密を漏らしたことによって解雇された場合
・事業所の名をかたり、利益を得または得ようとしたことによって解雇された場合
・他人の名を詐称し、または虚偽の陳述をして就職をしたために解雇された場合
以上が雇用保険の「自己の責めに帰すべき重大な理由」ですが、会社の就業規則が定める「懲戒事由」と完全に一致しているわけではありません。
ということは、会社の就業規則が定める「懲戒事由」に該当して懲戒解雇されたとしても、上記の「自己の責めに帰すべき重大な理由」の各号に該当しなければ「特定受給資格者」に該当する可能性があるということになります。現実には確率が低いと思いますが、あきらめずにチェックしてみるべきでしょう。
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