応じる必要はあるか
「解雇する」ではなく、「退職してくれませんか」と言うことを「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」といいます。
退職勧奨すること自体は違法ではありません。ただし、ことさらに多数回あるいは長期にわたる勧奨や、いたずらに不安感をあおるような言動は違法性があります。
退職勧奨は会社側の希望にすぎないので強制力はありません。
退職勧奨による退職は会社都合退職です
「わかりました」と承諾した場合、会社から辞めてほしいと言われたはずなのに、いつの間にか自己都合退職にさせられていることがあります。
充分に注意しましょう。
退職勧奨に応じた退職は、「自己都合退職」よりも優遇される「会社都合退職」となり、雇用保険の「基本手当の受給額」で有利になります。
退職時の手続きの一つである「雇用保険被保険者離職証明書」を渡されたときに、退職理由の欄をしっかり読んで、事実と違うことが記載されていたら不用意にサインしないようにしましょう。
業績悪化に伴う退職勧奨
会社の業績が低下して、人員を削減するために退職勧奨をすることがあります。
「売り上げが下がっているのは君も知っていると思う。もう誰かに辞めてもらうしかないんだ。君は扶養家族もいないし、若いからどこへ行っても大丈夫だろう。君の将来を考えてできるだけ円満にしたいから退職願いを出してくれないか」
このような場合は、経営環境が本当に厳しいのであれば、会社の先行きが怪しいのですから、退職金の上乗せなどの条件次第では受け入れた方が得策の場合もあります。
ただし、会社が危ないという話しは誇張されていることがあります。部門の成績が良くないときに、とりあえず人数を減らして生産性をよく見せようとする上司の企みかもしれません。
なので、退職をすすめられても即答してはいけません。雰囲気におされて受け入れてしまっても「やっぱりもう少し考えてみます」と話しを戻しておきましょう。その上で、会社の状況を冷静に見渡し、信頼できる人に相談してみましょう。もっとも、誰が信頼できるかが難しいですが。
特定の人に辞めてほしい退職勧奨
会社の業績とは関係なく、特定の人に辞めたほしいが解雇という手段はとりたくない場合に、退職勧奨する場合があります。この場合はいろいろな言い方があります。
「係長が君を使いづらいと言っているけど、どうなんだね?」
「君はこの仕事に向いていないようだね。売り上げが全然だめじゃないか。」
「君はチームから浮いているという話しがあるんだが、仲良くやっていくのは無理なのかい」
反省すべきことが思い当れば、謝罪し、改善に努めることを表明しましょう。また、どうすればよいか教えてもらうことも必要です。
また、本人に不始末があり懲戒解雇もできる状況で、温情的に退職勧奨をしてくる場合もあります。一般論ですが、懲戒解雇もやむを得ないほどのことをしたのであれば受け入れた方が得策でしょう。
退職勧奨を断りたい場合
毅然と断ればよいのです。「退職する気はまったくありません」などとはっきりと言いましょう。
退職という重大な事柄を会社から切り出されたのですから、あまり遠慮する必要はありません。遠慮がちな話し方では、もう一押しすれば辞めるだろうと相手に余計な期待を持たせてしまうことがあります。
辞めたくない理由は、生活がかかっているからとか、辞める理由が分からないとか、いろいろあると思います。その理由を述べてもよいのですが、無理に答えなくてもよいです。
相手は、あなたが述べた理由に対していろいろ作戦を立てて説得してくるのですから、理由としては少し弱いかもしれないと思ったら「とにかく辞めたくありません」で通した方がよいでしょう。
何度も同じことを言われたら「何度も退職の話しをされてとても苦痛です」などと自分の気持ちをきちんと伝えましょう。
逆に、なぜ退職を勧めるのか、会社の理由についてはいくらでも質問しましょう。
やり取りを記録しておきましょう
後に労働審判や裁判で争うときに備えて、いつ、どこで、誰から、どういう言葉で退職勧奨を受けたか、自分は何と言ったか記録しておくことが大事です。
通常は一度で終わらず何回も話があると思います。その都度全部記録しておきましょう。その際、実際の会話をそのまま記録することが大事です。その会話があった場所、何日の何時何分かも書いておきましょう。相手の口調、手ぶり身振りも書いておきましょう。そのことがあった当日に、記憶が新しいうちに書いておきましょう。後回しにしたらだめです。
要点だけに整理したり、パソコンで清書したりすると証拠力が弱まります。裁判などで記録や証言は「具体的で迫真的」なものほど信用がおけるとされます。録音するのも一つの方法です。録音だけに頼ってはいけません。
断り続けるとどうなるか
会社が根負けすることが多いです。それで一旦終了です。
会社が何としても辞めさせたいと思っているときは解雇される危険があります。
そうなったときは、総合労働相談コーナーや弁護士等の専門家に相談しましょう。
労働局や労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーは、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としています。
労働基準法等の法律に違反の疑いがある場合は、労働基準監督署等の行政指導等の権限を持つ担当部署に取り次いでくれます。
法律違反を伴わない場合は「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づいて、労働相談を受け、「助言・指導」や「あっせん」の手続を説明してくれます。
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