スキップしてメイン コンテンツに移動

婚姻届を取消または無効にできる場合があります

原則は取り消せない

婚姻届を提出したあとに別れたくなっても、受理された後であれば、無かったことにすることはできません。別れるには離婚の手続きをするしかありません。

ただし、一定の場合には、婚姻の取消しまたは婚姻の無効を裁判所に請求することができます。

取消し請求ができるケース

法律違反の婚姻

法律に違反している場合は、本来なら受理されませんが、何かの事情で受理され婚姻が成立してしまった場合は「取消し」の請求をすることができます。

民法に次の規定があります。

民法第744条 第731条から736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
2 第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。

民法731条から736条は次の通りです。

第731条 婚姻適齢
不適齢者が適齢に達したときは取消せなくなります。ただし不適齢者自身は、適齢に達したあと3ヶ月は取り消し請求することができます。

第732条 重婚の禁止

第733条 再婚禁止期間
前婚の解消もしくは取消しの日から起算して100日を経過したとき、または女性が再婚後に出産したときは、取り消し請求ができなくなります。

第734条 近親者間の婚姻の禁止
第735条 直系姻族間の婚姻の禁止
第736条 養親子等の間の婚姻の禁止

上記の場合は取消し請求ができます。

詐欺又は強迫による婚姻

詐欺又は強迫による婚姻も取消し請求できます。

民法に次の規定があります。

第747条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

詐欺や強迫を相手方から受けた場合だけでなく、第三者から受けた場合も含むとされています。

この場合の詐欺とは、相手方が自分の不都合な過去を隠していたとか、借金を隠していたとか、職業や年収を偽っていたというのは含まれません。そのようなことは離婚の原因になりますが、婚姻の取消の原因にはならないとされています。

詐欺を発見してから、あるいは強迫を免れてから3か月を経過した場合、あるいは婚姻を追認した場合は取り消せなくなります。

詐欺又は強迫による婚姻の取消しを請求できるのは、詐欺・強迫を受けて婚姻をした本人だけです。親族等はできません。

無効請求ができるケース

民法には婚姻の取消しとは別に婚姻の無効についての規定があります。

民法第742条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

婚姻意思がないときには婚姻は無効となるという規定です。

例えば婚姻意思がないのに他人が勝手に婚姻届を出した場合などがこれにあたります。

当初は無効な婚姻であっても、当事者が後で追認したとされ、届出時に遡って婚姻は有効となると判断されたケースもあります。

二は、「婚姻の届出をしないとき」ですが、婚姻届を提出していない段階では、そもそも婚姻は成立していないと考えられているので、この規定にはあまり意味が無いようですが、但書には意味があります。たとえば婚姻届に不備があっても、市区町村にいったん受理されると婚姻は有効に成立するという意味です。

取消しと無効の違い

婚姻が取り消されてもその取り消しの効力は、過去には遡りません。つまり、その婚姻は、取り消されるまでは有効となり、取り消された以降は無効となります。

婚姻の無効は、婚姻当初に遡ってその婚姻が無かったものとされます。

手続きについて

取消しを求める手続き

婚姻の取消しを求める訴えを家庭裁判所に提起しますが、その前に家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。

取消しを認める判決を受けるまでは、婚姻関係は有効に存在していることになります。

取消しがなされると、その時点から将来に向かってのみ取消しの効力が発生します。財産関係については、婚姻当時に遡った処理がされます。

無効を求める手続き

婚姻の無効を求める訴えを家庭裁判所に提起しますが、その前に家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。

戸籍訂正の手続き

判決によって請求が認められればその旨を役市区町村に届出て戸籍の訂正を求めることができます。

戸籍の訂正は。婚姻の部分に線を引いて抹消するだけなので完全に記載が消えてしまう訳ではありません。

無効になった部分を無くするには戸籍の再製が必要です。市区町村によりますが、戸籍の訂正後、申出により届出が提出される前の戸籍を再製できます。

本籍を変えれば、取り消された部分までは転記されないので実質的に再製と同じ効果を得られることがあります。

婚姻の取消し無効については、弁護士や司法書士などの専門家に相談した方がよいでしょう。

トップページ結婚についてのあれこれ>このページ

このブログの人気の投稿

メールのビジネスマナー

ビジネスメールの構成 ビジネスメールは、本文の書き方はもちろん重要ですが、基本的な形がしっかりしていると、印象がよいものです。 タイトル、本文(宛先、挨拶と名乗り、用件)、署名が基本的な構成です。 タイトルの書き方 メールにはタイトル(件名)を書く欄があります。空欄でも送れますが、ビジネスメールでは必ず入れるようにしましょう。 タイトル例 〇〇会議の開催について 〇〇資料のご送付 〇月〇日の打ち合わせの確認 「おはようございます」「先日はありがとうございました」というタイトルは迷惑メールに見えることがあります。 本文の書き方 宛先 一番最初に宛先を書きます。 名前だけでなく、会社名 、部署名、役職名も書きます。 名前のあとの敬称を忘れないようにしましょう。宛名の書き間違えは失礼です。名刺などで確認しましょう。昇格していることがあるのでその点にも注意が必要です。 CC、BCCは、会社の決まりがある場合は従わなければなりませんが、特に制約がなければ、なるべく使わない方がよいでしょう。特に、CCは、相手に全員のメールアドレスが表示されるので嫌がる人も多いです。注意しましょう。 件名 件名は空欄でも送れますが、ビジネスメールのときは、件名を必ず記入しましょう。 件名は、単に「ご報告」「ご連絡」ではなく、「○○についてのご報告」「〇〇に関しての問い合わせ」などのように、内容が推定できるような書きかたをします。 書き出し 手紙の場合は、「拝啓」「謹啓」などの頭語(とうご)から始めますが、メールには頭語を付けません。 また、手紙は頭語のあとは時候の挨拶を書きます。早春の侯 寒さの中に春の気配を感じる頃となりました。などというところです。 初めての人にメールするときや、久しぶりにメールをするときなどは、時候の挨拶を入れて丁寧にすることもありますが、メールの場合、時候の挨拶を省略するのが普通です。 次のような書き出しが一般的です。 いつもお大変世話になっております(こと、厚く御礼申し上げます)。 用件を書く この後に、用件を書きます。 締めのあいさつを書く 用件を書き終えたら、締めのあいさつ文を書きます。メールの場合は、手紙のような「敬具」「敬白」などを結語(けつご)を書きません。 よろしくお願いいたします。が普通です。 署名 メールの最後に記載する、会社名、氏名を署名といいます。 ...

会社員は年末調整で所得税の過不足を精算する

年末調整とは 本来、税金は、納税者本人が所得税額を税務署に申告して、納付を行うのが原則です。 ところが、会社員等の場合には、納税者である会社員は自分で納税の申告をする必要が無く、税金の計算や徴収事務を会社が行うことになっています。 これを源泉徴収制度といいます。 源泉徴収制度の定めに従って、会社は毎月の給与や賞与から所得税を差し引いて税務署に納付しています。 ただし、毎月の税額は、仮の計算で算出しているので、正式な計算による税額と一致しません。 そこで、12月の最後の給与(または賞与)の支払時に、正式な税額計算をして、もらい過ぎていれば返し、足りなければ追加徴収します。 この事務を「年末調整」と言います。 年末調整の対象者 年末調整の対象となる人は、会社などに1年を通じて勤務している人や、年の中途で就職し年末まで勤務している人です。12月時点で勤務している人はほとんどの場合対象になります。 ただし、次の人は除かれます。 1 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人 2 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人 また、 2ヶ所以上から給与を支払われていて、他の勤務先に扶養控除申告書を提出している人も年末調整の対象外です。 さらに、年末調整までに必要な書類を提出していない人は自分で確定申告をする必要があります。 会社に提出する書類 年末調整の書類は、通常は次の3枚です。 「令和〇年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」 「令和〇年分 給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」 「令和〇年分 給与所得者の保険料控除申告書」 生命保険と地震保険については、加入している各生損保会社から「保険料控除証明書」が送られてきます。 年末調整は年に一度しかないので、すぐに忘れてしまいがちです。記入した書類をコピーして保存しておけば来年役立ちます。 年末調整用の用紙や記載例は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。 トップページ > 給料明細書の見方 >このページ

業務上災害の要件

労災における業務上とは 業務災害とは、労働者が、業務上の理由で、負傷、疾病、障害又は死亡することです。 業務災害と認められれば労災保険の給付を受けることができます。業務災害であると認められるには、業務起因性と業務遂行性の2つの要件があります。 要件1 業務起因性 業務上というのは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます。 要は、負傷、疾病、障害又は死亡の原因が、仕事を原因としているかどうかです。 これを「業務起因性」といいます。 要件2 業務遂行性 また、業務災害に対する保険給付は労働者として雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われるものですから、労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害でなければなりません。 これを「業務遂行性」といいます。 要は、負傷、疾病、障害又は死亡が、仕事をしているときに起ったかどうかということです。 つまり、仕事をしているときに、仕事が原因で負傷、疾病、障害又は死亡ということになれば業務上災害として、労災保険の給付を受けることができます。 一般的には、常識的な判断で申請してほぼ間違いないと思いますが、業務起因性と業務遂行性を検討して、度合いによっては労働基準監督署長が認めないこともあります。 事例解説 労働時間中 仕事をしているときに発生した事故は、原則として業務上災害です。この仕事中には、作業の準備や後片付けの時間も含まれ、手待ち時間の仮眠中の事故も業務中と認められます。 作業を中断してトイレに行って、トイレで転倒してケガをしたというような場合も、仕事中であってもトイレに行くのは当然の行為なので、トイレで仕事をしているわけではありませんが業務上災害に認めれらています。類似の行為に、水を飲む、風で飛ばされた帽子を拾うなどがあります。 業務に関係のない私用で抜け出して事故にあった場合は業務外とされます。ただし、忘れたメガネを届けてもらって、それを門までとりに行く途中の事故については仕事に必要だったとして認められた例があります。 担当業務でないことを行って事故にあった場合、それが使用者の命令で行ったことであれば業務上となりますが、自分の本来の仕事でないことを単なる親切心から行ったときは難しいようです。事情により判断が分かれます。 休憩時間中 休憩時間中であっても、事...